29日、首都カブールの 大統領府で、アフガニスタン大統領のアシュラフ・ガニ氏は就任宣誓を行いました。
就任宣誓を行っているガニ氏(左)
(写真:ロイター)
2001年のタリバン政権崩壊後、約13年間にわたり同国を率いたカルザイ氏に代わり「挙国一致の政権」を樹立し、治安回復や 経済再生など国家再建に向けた課題に挑みます。アブドラ氏は選挙の混乱を収拾させるため、首相に相当する新しいポストの「行政長官」に就きました。
内部対立、阻害少なくない
ガニ氏は就任宣誓後「われわれは未来に希望を持つべきだ。社会正義は平和の礎であり、政治は平和をもたらすためにある」と演説しました。反政府勢力タリバンに対し、和平対話に応じ、政治プロセスに参加するよう呼び掛ける一方、行政改革と腐敗撲滅を新政府の優先課題に挙げました。
大統領選の不正問題で失った国民の信頼を取り戻すことも重要だということです。決選投票では選挙管理委員会による再調査の結果、全約800万票のうち数十万票が不正と判断されました。しかし、両候補の得票率や正確な不正票数は公表されていません。
国民の間では「国民の意思とは関係なく、政治的決着が図られた」と不満が強いという状況です。地元メディアによりますと、ガニ氏が内務、財務両省などを管轄する一方、アブドラ氏は外務、国防省の人事権限を持つとみられます。このため、今後の政策決定や人事において「権力の二重構造」に陥る可能性を懸念 する声もあります。
治安回復や経済再建の確保
アフガニスタン新政権は、内部を安定させる傍ら、国内の治安回復や経済再建などの課題に取り組まなければなりません。29日も就任式の前にカブールの空港近くで爆発物が爆発し、子ども2人を含む市民4人が死亡する事件があり、タリバンが犯行を認めていて治安の悪化に歯止めがかかっていません。
前のカルザイ政権ではタリバンとの和平交渉は実現しておらず、ガニ新政権が対話を通して治安の改善を実現できるのか手腕が問われることになります。ガニ新大統領は30日にも、アメリカとの間で駐留アメリカ兵の治外法権を認める「安全保障協定」を締結します。これにより今年末の米軍の完全撤退というシナリオは回避されます。
アフガニスタンは国家予算の半分以上を外国からの支援に頼って、最大の支援国アメリカはこれまでに1040億ドルに上る支援を行っています。この支援規模は第2次世界大戦後、欧州諸国の復興のために行った「マーシャル・プラン」を上回る規模となっています。
しかし、今後、国際社会の支援が減って、治安部隊への給与の支払いなどを含め、国家財政に支障が出てくるのではないかとの指摘も出ています。
また、選挙の混乱が長引いたことで、投資が減少するなど経済状況は悪化していて、アフガニスタン工業協会によりますと、この半年間で全国の工場のおよそ6分の1が操業の停止に追い込まれたということです。
さらに農業をはじめとした地方の復興の遅れも深刻で、新政権には経済の立て直しが求められています。アフガニスタン新政権が直面する試練は少なくないことでしょう。