インドのモディ首相は、10日からセーシェルやスリランカなどのインド洋の3か国を訪問しています。今回の歴訪は様々な目標があり、中でも、地域におけるインドの影響力の向上や、協力の強化などは重要と見られています。これはまた、インドの地位向上に対するモディ政権の高い関心を示すものでもあります。
セーシェル国民がモディ首相を歓迎(写真:Press Trust of India)
インド外務省によりますと、モディ首相は10日から5日間の日程で、インド洋の島国、セーシェル、モーリシャス、スリランカの3か国を訪問し、海洋の安全保障の分野で協力関係を深め、インド洋でも海洋進出を強める中国をけん制するねらいもあるものと評されています。
近隣諸国との関係教を重要視
モディ首相の最初の訪問先はセーシェルです。この国は、総人口が9万人未満だけですが、重要な地理的地位があります。そして、インドの現職首相のセーシェル訪問は34年ぶりのことです。モディ首相は11日、セーシェルのミシェル大統領と会談し、海洋安全保障やインフラ開発などの分野での協力強化で一致しました。
次の訪問先はモーリシャスですが、セーシェルとモーリシャスでは、巡視船や監視用のレーダーを供与する式典に出席し、海洋の安全保障の分野で関係強化を進めるとしています。また、スリランカは、インドの首相として28年ぶりの訪問となり、ことし1月に就任したシリセナ大統領に鉄道や発電所などのインフラ整備への支援を表明する見通しです。
スリランカでは、前の大統領が中国との関係を重視し、スリランカの港に去年中国海軍の潜水艦が初めて寄港したと大きく報じられるなどしましたが、シリセナ大統領は前大統領の中国重視政策を見直す動きを示しています。インド洋での中国の海洋進出を警戒するインドとしては、モディ首相の今回の訪問でスリランカを始めインド洋の国々と連携を強めることで、インドが具体的な対策を取っていることを示すねらいもあるものとみられます。
地位向上の重要性
長い間、インド洋はインドの裏庭と考えられてきましたが、この地域ではインドの影響力が薄らいできています。これら3カ国すべてで、中国が建設した高速道路、発電所、港湾を目にすることができるのです。こうした中、民間や、軍からの支持を確保したモディ氏は、ここでインドの影響力をあらためて誇示したいと考えているようです。
インド洋諸国のほか、日本などとの関係の強化も重要視しています。モディ氏が首相就任後の初の外遊先として日本を選んだことはその証といえます。そして、今回のインド洋3各国への歴訪を通じて、インドの現政権の外交政策の特徴の一部が明らかになっています。