60年にわたる軍事政権を経て、2011年に外部世界に門戸を開き始めたミャンマーは、11月8日に極めて重要な総選挙を行いました。正式な選挙結果は15日に発表されますが、アウンサンスーチー氏(70)率いる最大野党NLD「国民民主連盟」の勝利が確実になっています。国民の心を捉えたのは、与党USDP「連邦団結発展党」を率いるテインセイン大統領(71)が訴えた「着実な民主化改革の継続」ではなく、スーチー氏が掲げた「チェンジ(変革)」でした。
ミャンマー連邦選挙管理委員会によりますと、3200万人の有権者のうちの約8割が投票を行ないました。これは、ミャンマーの将来に対する国民の大きな関心を示す数字です。野党NLDの勝利は、国民が変革を強く求めることを反映しています。
NLDの支持者(写真:VNA)
発展のための有利な条件
ミャンマーは2011年に軍政から民政に移管して約4年半経ちましたが、かなりの成果を収め、急速な発展の道のりをたどっています。政治面では、今回の選挙で、90以上の政党から6千人以上の候補者が出馬しました。また、先頃、政府と少数民族の武装勢力の間で停戦合意が達成し、着実な和平が期待されています。
経済面では、軍政に対する欧米諸国の経済制裁により世界の最も貧しい国であるミャンマーはこの3年、7.6%もの年平均成長率を維持しています。ミャンマーは東南アジアで有望かつ魅力的な投資先として目立っています。ADBアジア開発銀行は、2030年まで、ミャンマーの年平均成長率は9.5%にのぼると予測しています。IMF国際通貨基金は、ミャンマーについて、「豊かな天然資源と労働力のほか、インド・中国・東南アジア地域といったデルタの中央にある有利な地理的条件を持っている」と評価しています。
しかし、こうしたミャンマーがダイナミックな発展を遂げるためには、更なる変革が必要です。国民の多くは「変革」を求めてNLDに投票しました。
大きな試練
しかし、ミャンマーの新政府は選挙後、多くの試練に直面すると見られています。まずは、新政府と国軍との関係です。現政権は大統領を筆頭に元軍幹部が主要ポストを占め、政府も軍人を中心に構成されます。国政経験がほとんどないNLDが政権を担うには、長期間対立してきた国軍とも「和解」して人材登用などで協力し、国の安定と成長に向けた体制を築けるかが問題となりそうです。
そして、宗教問題や少数民族の独立運動もミャンマーの安定を脅かす恐れがあります。また、総人口6000万人のうち、約3分の1は貧困状態にあるミャンマーは経済基盤が弱く、インフラが整備されていません。さらに、ここ最近、インフレ率の上昇と通貨安に苦慮しています。しかし、今回のミャンマーの総選挙は民主化への大きな一歩であり、ミャンマーの変革のスタートになると期待されています。