内戦状態に陥っている中東のイエメンの和平に向けた協議が15日、スイスのジュネーブで国連の仲介によって始まりました。国連のパン・ギムン事務総長は、ハディ政権側と反体制派のイスラム教シーア派武装組織「フーシ」が和平協議で直接対話し、イエメンの紛争を目指す解決策を見出せることに期待を示しましたが、政権側は反体制派の占領地域からの撤退を強く求めているのに対し、反体制派は政権側を支持する隣国のサウジアラビアなどによる空爆の即時停止を求めるなど立場の隔たりは大きく、協議の行方は予断を許しません。
15日ジュネーブで行なわれたパン国連事務総長とイエメンの外相
和平協議への困難な道のり
イエメンの和平に向けた協議は今まで、アラブ連盟や国連の仲介を問わず、何度も失敗しました。サウジアラビアの首都リヤドで開催される予定だった対話は、イエメンの首都サヌアを含む南部にかけての広い範囲の地域を掌握した反体制派が参加しなかったため、中止となりました。国連仲介の和平協議も当初、5月28日に開催予定でしたが、政権側と反体制側の間には立場の大きな隔たりがあったため、延期されました。そのため、今回の協議の開催自体は大きな進展と評されています。国連は政権側と反体制側が今回の協議に代表団を派遣することを高く評価し、人道危機に陥っているイエメンに和平を戻すような解決策を見出すよう呼びかけています。
国連によりますと、イエメンでは、今年の3月以降、約2600人以上が死亡しているほか、人口の8割が人道支援を必要としています。パン事務総長は政権側と反体制派に対して18日に始まるイスラム教の断食月、ラマダンに合わせて少なくとも2週間の新たな停戦に応じるよう呼びかけました。
和平協議の課題
去年の9月、国連の仲介で、イエメンの各派は新憲法を制定し、議会や大統領の選挙など実務形の政権を発足させる政治的なプロセスの実施について、合意していました。今回の和平協議では、このプロセスを再開させることが最終的な目標になります。しかし、サウジアラビアの主導によるアラブ諸国などが空爆を始めた今年3月以降、ハディ政権側と反体制派は直接対話をしていません。そのため、和平協議で本当に直接対話できるのかが注目を集めています。
これまで、政権側は国連安全保障理事会の決議が求めるように、反体制派が掌握した地域から部隊を撤退させることと、3月から国を離れているハディ大統領が帰国し、政権の機能を取り戻すことを要求しています。これに対し、反体制派はハディ大統領の正統性を否定しており、対話に応じる前提として、反体制派に対する攻撃や空爆を無条件に中止するよう求めています。双方の立場には大きな隔たりがあり、和平協議は極めて難しい情勢です。また、ハディ政権を支持するサウジアラビアや欧米側と、反体制派を支持するイランなど各国の思惑の違いがあり、和平協議で、すべての関係国が受け入れられる結果を出せるかは予断を許さない状況です。