(VOVWORLD) - ベトナム北部山岳地帯に暮らす少数民族パテン族は、独自の新年の祝い方を今日まで大切に受け継いでいます。ハザン省クアンビン県タンバック村では、旧暦12月末になると米倉が満ち、家畜が十分に育った頃を見計らって、伝統的な新年の準備が始まります。
大晦日に先祖を祭るパテン族 |
現在、約1万人のパテン族の多くは、トゥエンクアン省チエムホア県やハザン省の各地に分かれて暮らしています。特にタンバック村には約3000人が集住し、新年行事をはじめとする伝統文化が色濃く残されています。
12月末、家々の庭や丘の斜面に桃や梅の花が咲き誇る頃、タンバック村では新年の準備が本格化します。タンバック村マイバック集落の祈祷師シン・バン・フォンさんは次のように語りました。
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「各家庭では酒、薪、鶏、豚、もち米を用意し、パテン族の特産品である『バインザイ(丸餅)』を作ります。また、新年の供物と食用のため、鶏は特別の囲いのなかで清潔に飼育され、豚は10月から新年に向けて丁寧に育てられます。子供のためのおもちゃも準備します。昔は『イエン』や『クー』といった伝統的な遊びの道具も用意されました」
フー・ティ・ティエンさんの家では、早朝から村中の親戚が集まり、普段以上の賑わいを見せました。家族総出でベトナム風のチマキ「バインチュン」や、水牛の角型を持つ餅「バインスンチャウ」、丸餅「バインザイ」などお正月に欠かせない料理の準備に取り掛かり、豚を解体し、酒を用意しました。
ティエンさんは「以前は多くの家庭が貧しく、新年でさえ酒と米、わずかな肉しか用意できなかった」と振り返りました。しかし近年、政府の支援と住民の努力により、パテン族の生活は大きく向上し、各家庭で豚や鶏、餅を十分に用意し、親戚と共に新年を祝えるようになりました。
祈祷師のシン・バン・フォンさんによりますと、大晦日には各家庭で鶏1羽、お椀10個、酒1本、線香などを用意して神々への感謝の儀式を行います。この儀式は深夜1-2時まで続くこともあり、その後、悪霊を追い払い、家に入れないよう戸を閉めます。
大晦日の夜には、各家庭で厳重な戸締りを行い、祖先の祭壇に置かれた水を新しいものに取り替えます。この水は海を象徴し、祖先と家族の魂が宿ると考えられており、6ヶ月に1度しか取り替えることができません。水が干上がると家族に病気や不幸が訪れると信じられているため、細心の注意を払って管理されます。
大晦日の夜、パテン族の各家庭では特別な食事が振る舞われます。フー・ティ・ティエンさんは、この食事の内容は家系によって異なると述べ、次のように語りました。
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「私たちフー姓の家族は、伝統的にお粥を食べます。大晦日の夜に男性たちがお粥を作り、翌朝、人目を避けて家族だけで食べるのです。一方、シン姓の家族は白米のご飯を食べます。このように、パテン族では各家系がそれぞれ異なる伝統的な食事を守り続けているのです」
元日の早朝、人々は庭に出て四方に向かって拝礼し、土地の神や山の神、川の神に新年の天候の安定と家族の健康を祈ります。その後、水源へ赴いて水を汲む神聖な儀式を行い、一年中きれいな水が絶えないよう祈りを捧げます。クアンビン県タンバック村の住民フー・バン・スエさんは次のように語りました。
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「パテン族には、元日の朝に田畑を訪れるという美しい伝統が残されています。家族揃って野に出て、新しい年の健康と安寧を祈り、豊作を願います」
新年の期間中は、互いの家を訪問して挨拶を交わし、伝統的な遊びや祭り、餅作りコンテストなどの行事に参加します。これらの春の行事を通じて、パテン族の人々は豊作と暮らしの豊かさを祈り続けています。このように、変わりゆく時代の中でも、独自の文化や信仰を大切に守りながら、新しい生活との調和を実現しているのです。