EU経済再生、大規模な投資と改革が必要=ドラギ氏報告書
(VOVWORLD) - 欧州中央銀行(ECB)前総裁で前イタリア首相のマリオ・ドラギ氏は9日、欧州連合(EU)の競争力向上に関する報告書を公表しました。
ドラギ氏は、EUがアメリカや中国に追いつくためには、より協調的な産業政策、迅速な意思決定、そして大規模な投資が必要であると指摘しています。
この報告書は、EUの執行機関である欧州委員会が、世界的な摩擦が激化する中でEUがどのようにしてグリーン化を進め、デジタル経済の競争力を高めるべきかについて、1年前にドラギ氏に依頼したものです。
ブリュッセルでの記者会見でドラギ氏は、「現在の状況は非常に憂慮すべきものであり、欧州の長期にわたる成長鈍化をこれ以上無視することはできない」と述べました。また、EUが対応を怠ってきたことについて「状況は変わっている」と強調しました。
約400ページにわたる報告書の冒頭でドラギ氏は、EUは年間7500億~8000億ユーロ(約83兆~88兆円)の追加投資が必要であると指摘しています。これは域内総生産(GDP)の最大5%に相当し、第2次世界大戦後の欧州再建に向けたマーシャルプランの1~2%を大きく上回る規模です。
報告書では、EU諸国はすでに新たな現実に対応し始めているものの、連携不足が影響を及ぼしていると述べています。ドラギ氏は、「EUの取り組みを最も差し迫った問題に集中させ、共通の目標の下で効率的な政策調整を確保する必要がある」と提言しました。また、「迅速に行動したい加盟国は、それができるような新たな手法を用いるべきだ」と提起しています。
必要な投資額の一部は既存の加盟国やEUの財源で賄われますが、ドラギ氏は新たな共通財源の確保が必要であると改めて強調しました。しかし、ドイツのリントナー財務相は「共同借り入れではEUの問題は解決しない」として、これに同意しない姿勢を示しています。
一方、アナリストらは、EUがドラギ氏の提案に対して慎重な態度を取る可能性が高いと指摘しています。ドイツとフランスの政治的不透明感や、他のEU加盟国間の長年の分裂が、統合に向けた進展を妨げる要因として挙げられています。
また、報告書では、EUがもはや海外市場に頼ることができず、エネルギー価格の上昇に対処するために苦慮しているとし、イノベーションを促進しつつエネルギー価格を引き下げ、脱炭素化を進め、必須鉱物資源での中国依存を減らす必要があると述べています。加えて、防衛投資の強化も訴えています。(ロイター)