ベトナムの領有権問題とそれに関連する文化



山崎  こんにちは、山崎千佳子です。

ソン こんにちは、ソンです。今日のハノイ便りは、ベトナムの領有権問題とそれに関連する文化についてお伝えします。

山崎 領有権問題というと、ベトナム東部海域、いわゆる南シナ海問題ですね。以前、ハノイ便りで、漁業関係者への優遇政策について取り上げた時にも、お伝えしました。

ソン そうですね。その海域にあるチュオンサ諸島とホアンサ諸島は、およそ1000年前からベトナム人が定住していたと言われています。

ベトナムの領有権問題とそれに関連する文化 - ảnh 1

山崎 チュオンサ諸島が英語名でスプラトリー諸島、ホアンサ諸島がパラセル諸島になりますね。

ソン はい。長年にわたって、ベトナムの海と島の領有権について研究してきたベトナム歴史科学協会の副会長、グエン・クアン・ゴックさんという人がいるんですが、そのゴックさんが現地調査のため、やっと昨年、チュオンサ諸島を訪れることができたんです。

山崎 やはり、簡単には行けないところなんですね。長い間研究してきて、初めて現地に行けたというのは、感慨深いでしょうね。

ソン そうですね。ゴックさんが研究してきたのは、サーフイン文化という青銅器文化です。

山崎 サーフイン文化?初めて聞きました。どんなものですか?

ソン サーフイン文化、サフイン文化とも言いますが、ベトナムの中部から南部にかけて存在したものです。青銅器を使用して、農耕に従事しながら独自の漁業文化を持っていたようです。

山崎 その文化を検証するために、現地であるチュオンサ諸島に行ったんですね。ベトナム歴史科学協会の副会長、グエン・クアン・ゴックさんの話です。

(テープ)

「数千年前に開墾が行われた跡を島で見つけました。古代チャム族とサーフイン文化を担った人々でしょう。チュオンサ諸島には3000年前に存在したサーフイン文化の現物、陶磁器などが残されています。これはその時代に作られた特別なイアリングです。」

山崎 また、ベトナム考古学協会のトン・チュン・ティン会長によりますと、チュオンサ諸島の中のいくつかの島で行った発掘調査の結果、10世紀から18世紀までの長い期間に作られた陶器の破片が見つかったということです。

ソン ベトナム人がその時期にチュオンサ諸島にいたということを示しています。

山崎 ベトナム考古学協会のトン・チュン・ティン会長の話です。

(テープ)

「チュオンサ諸島で見つかった物は、ベトナム人が大分前からその地域にいたことを示すものです。ベトナム人が海上貿易や文化活動を行っていたことの証明です。考古学研究の成果です。」

山崎 ここで、一曲お送りしましょう。「~」です。

(曲)

「~」をお送りしました。

チュオンサ諸島には、考古学研究に重要な器や装飾品など遺物があるだけではなくて、ベトナム風の寺院も多く建てられたそうです。ベトナムの人が、昔からこの地域で生活していたということですね。

ソン はい。また、ベトナムの古い書物によりますと、ベトナムの最後の王朝であるグエン朝の第二代皇帝、ミンマン王は寺院を建立するため、何度も建設資材と人々をチュオンサ諸島に派遣したと言われています。寺院や神社は、漁業に携わる人たちの安全祈願のためのものです。また、チャン王朝時代の英雄、チャン・クオック・トアンの像も建てられています。

山崎 チャン・クオック・トアンはどんなことをした人なんですか?

ソン 13世紀に2回にわたって、モンゴルの侵攻を打ちのめした人物です。チャン・クオック・トアンは、「人民の力を活用するのが、国を守るための最善の方策である」と言っていたそうです。

山崎 なるほど。領有権問題で揺れるチュオンサ諸島に、国を守った英雄の像を建てるというのは、その意味がわかる気がします。

ベトナムの領有権問題とそれに関連する文化 - ảnh 2

ソン そうですね。島に駐屯しているベトナム人民軍の幹部や兵士、島民の精神的な支えになるんじゃないかと思います。

山崎 前半でも話を聞いた、研究調査のためチュオンサ諸島を訪れたベトナム歴史科学協会のグエン・クアン・ゴック副会長の話です。

(テープ)

「国の領土を守るという時に最も大切なことは、伝統的文化を守っていくということです。昔からある文化は、それぞれの心の中にある愛国心を鼓舞するものだと思います。伝統的文化が、領土保全のために頑張っているベトナム人民に力を与えるんです。」

山崎 昨年の3月には、中部のカインホア省にモニュメントが建てられました。チュオンサ諸島で1988年に起きたベトナムと中国の武力衝突で犠牲となったベトナム軍兵士64人をたたえたものだそうです。
ソン 中国が埋め立て工事をすすめるなどチュオンサ諸島での実効支配を強める中、この記念碑の設置は領有権がベトナムにあることをあらためてアピールする狙いがあります。

山崎 今月には、中部のクアンガイ省のリソン島で、ホアンサ諸島の兵士を偲ぶ記念碑の建設が始まるということです。

ソン これは、18世紀に、ベトナム最後の王朝、グエン朝の命によって、リソン島を出発し、ホアンサ諸島とチュオンサ諸島に駐留したクアンガイ省の人々を想うためのものです。

山崎 こういったモニュメントが、ベトナムの人たちの思いを表しているんですね。では、おしまいに一曲お送りしましょう。「~」です。

(曲)

「~」をお送りしました。

今日のハノイ便りは、ベトナムの領有権問題とそれに関連する文化についてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。

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