(VOVWORLD) - 古くからの伝統芸能を保存・開発するためには、担い手の育成のほか、新たな観客層の開拓が非常に重要です。そのため、ホーチミン市の芸術団は学校などと協力して若者に伝統芸能の面白さを理解し、興味をもってもらえるよう多くの活動を行っています。
ホーチミン市のオペラハウスの前で披露された伝統劇「トゥオン」
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(テープ)現場の音
お聴きいただいているのはホーチミン市ビンタン区にあるビンチドン中学校で行われた南部発祥の演劇ドラマの一種、「カイルオン」です。 チャン・ヒュー・チャンというカイルオン劇団によるこの演目は善と悪の闘いの物語りである「タクサイン・リートン」というカイルオンの古典劇ですが、中学生を対象としているため、文学的な要素が少なく、ユーモアあふれた劇となりました。そのため、生徒たちは劇に夢中になり、終了後には、役者たちとの交流を楽しみました。
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「とても楽しかった。目を引く化粧のアーチストがたくさんいました」
「今日の演目はヒューマンストーリーでとてもよかったです」
「とてもためになる内容だと思います。面白い演技をしてくれた役者の皆さんに感謝したいです。今日の体験でベトナム固有の伝統芸能「カイルオン」への理解を深めることができました」
この演目は、ホーチミン市の文化スポーツ局と青年同盟が長年、同市の芸術団と協力して展開している「学校の舞台」というプロジェクトの一部です。プロジェクトは伝統芸能の保存・開発のための新たな観客層の開拓を主な目的としていますが、子どもたちが芸術文化に触れる機会を提供する意味もあります。子どもたちの豊かな感性や創造力を育み、芸術文化を継承発展していくために不可欠であるとされています。その環境を整えるのに、最も重要なのが学校です。これが「学校の舞台」プロジェクトの主旨です。
プロジェクトでは、毎週各芸術団が順番に市内の学校を回ってカイルオンを演じます。一つの演目は45分から1時間で課外授業として実施され、子どもに伝統芸能を鑑賞する機会のほか、役者らとの交流の機会創出にもなっています。チャン・ヒュー・チャンの芸術担当ホアイ・ナムさんは、一回あたりの演目の時間は長くないので子どもたちは集中していられるが、本物のカイルオンを鑑賞するにはさらに工夫が必要であると述べ、次のように語りました。
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「子どもがカイルオンに親しみを持ってもらうには、役者らが大人の観客と同じように演じていてはだめです。子ども向けの演目は簡潔でわかりやすく、その上、カイルオンの芸術性と美を十分に備えたものでなければなりません」
トゥアンについて学生に紹介しているヒュー・ザインさん
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近年、「学校の舞台」プロジェクトは小、中、高等学校のほか、短期大学や大学でも展開されています。先ごろ、演劇、音楽、舞踊の3つの要素からなる伝統劇「トゥオン」を大学生に紹介するため、ホーチミン市トゥオン劇団はヴァンラン大学で交流会を行いました。交流会で学生たちは「トゥオン」の鑑賞のほか、歴史や特徴などについて学びました。ホーチミン市トゥオン劇団の役者 ヒュー・ザインさんはトゥオンについて学生に次のように紹介しました。
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「『トゥオン』には赤い顔と白い顔の2つのキャラクターがあります。これらのキャラクターは忠臣と奸臣を表します。また、青い顔は頭はよいが短命のキャラクターです。そのため、青い顔がステージに現れれば、途中戦場で死ぬというシーンがあるでしょう。トゥオンはベトナム固有の伝統劇で、皆さんと一緒に守っていきたいと思います」
ヴァンラン大学の学生たちの多くは少し興味がある程度でしたが、演目の最後まで夢中で見ることになりました。ヴァンラン大学商業美術科の3年生ミン・チヤウさんは次のように語りました。
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「とても面白かったです。トゥオンについて理解を深めました。私は商業美術を学んでいるので、トゥオンの面と衣装に特に関心があります。商業デザインに応用できると思いました」
ホーチミン市の芸術団は学校に伝統芸能を紹介するとともに、広場や公園など公の場でも演じています。観客に理解してもらうため、開始前に伝統芸能を紹介するコーナーを設置しています。ホーチミン市トゥオン劇団のパフォーマンス副担当者グエン・タイン・ビンさんは次のように語りました。
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「若者を中心に観客が増えつつあるという喜ばしい兆候が見られます。当劇団は幹部から役者まで、伝統的な要素を保ちつつ、新たな観客を引き付けるために様々な創意工夫を凝らしています」
現代社会において伝統芸能の保存・開発は容易ではありませんが、鑑賞の機会や役者との交流など若者に伝統芸能に触れる機会の提供に取り組むことで、新たな観客の開拓が進み、伝統芸能が維持されていくことが期待されています。