少数民族の音楽を保存する人々

(VOVWORLD) - 伝統音楽を始め、伝統文化を保存するためには、その文化が生きている空間を保存・拡大させるのが最も重要です。

ホアイ こんにちは、ホアイです。

ソン こんにちは、ソンです。今月の9日から11日にかけて、中部高原地帯テイグェン地方ザライ省で、テイグェン地方の銅鑼・シンバル・フェスティバルが開催されました。これは、少数民族の音楽保存を目指す活動の一つです。では今日のこの時間は、少数民族の音楽保存についてお伝えします。

少数民族の音楽を保存する人々 - ảnh 1 パコ族の角笛

ホアイ はい。ベトナムは54の民族がともに共存している多民族国家です。多数民族であるキン族以外に、モン、ムオン、ヌン、ザライ、エデなど53の少数民族があります。こうしたベトナムは、少数民族の豊かな文化を誇りにしていますが、少数民族の文化について触れるならば、音楽を抜きにして語ることはできないでしょうね。

ソン そうですね。それぞれの少数民族は独特な音楽を持っていますが、少数民族の音楽はベトナムの豊かな音楽の欠かせない一部です。少数民族の音楽の多くはベトナムだけでなく、外国でも知られているようになってきました。例えば、コム族の民謡「雨が降る」や、セダン族の民謡「子守歌」、タイ族の民謡「イン・ラ・オイ」、テイグエン地方に住む各少数民族の銅鑼などが挙げられます。

ホアイ 少数民族の音楽はベトナム音楽の発展に大きく貢献していると言えます。ベトナム音楽研究所の元所長グエン・ビン・ディン博士は次のよう話しました。

(テープ)

「各少数民族の音楽は、音階やメロディー、楽器などについて様々ありますが、その多様性は、ベトナムの豊かな音楽をつくったものであり、ほかの国と違うベトナム独特さにつながるものでもあります。」

ホアイ しかし、近年、各少数民族の伝統的な音楽は生活が変化する中で衰退しているようです。この音楽を楽しむ若者が減っているということですか。

ソン そうなんです。こうした状況を前に、少数民族の伝統音楽の保存を目指す取り組みが行われています。その中で、パコ族は伝統音楽の保存にとりくんでいますね。

ホアイ そうです。ベトナム中部に住む少数民族パコ族は豊かな文化でよく知られていますが、その中でも、音楽はこの民族の文化の目玉の一つとされています。

ソン パコ族は一年を通して、新米祭り、天地を祀る儀式、新築祝い行事など多くの行事を催していますが、これらの行事に欠かせないのが音楽です。ティレル、アマム、アンクイなどの楽器のメロディーと合わせて、チャチャプ、アゼン、カロイなどの民謡を歌うことを通じて、神様に自分の祈願や希望を伝えるのです。そして、銅鑼と太鼓の音は、神様へのご挨拶と村人への招待を意味するもので、行事の雰囲気のベースを作り出すとされています。

ホアイ パコ族の民謡の中で最も有名なのはチャチャプという民謡です。チャチャプは歌垣の形式で、若者向けのチャチャプ、お年より向けのチャチャプ、そして、年齢を問わずのチャチャプという3種類があります。チャチャプの特徴は、山、川、木、雲、雨などを使って自分の気持ちを表すことで、人文的価値が高いと評されています。

ソン この民謡を保つため、村人は子どものためにチャチャプのクラスを開いたり、チャチャプの交流会を頻繁に行っています。

ホアイ チャチャプの保存事業に大きく貢献しているホー・ヴァン・セップさんは、孫に先祖の文化を理解してもらうには音楽が重要な役割を果たすと語り、次のように話しました。

(テープ)

「昔から伝わる民謡を覚えることができて誇りに思っています。私は若者がこの民謡を受け継げるように取り組んでいます。チャチャプを習うのは難しいですが、若者たちが早く習うことができ、うれしく思っています。」

少数民族の音楽を保存する人々 - ảnh 2 ムオン族の銅鑼演奏

ホアイ 一方、北部に住む少数民族ムオン族は、次の世代に伝統的な楽器銅鑼とシンバルを受け継がいてもらうように取り組んでいます。

ソン ムオン族の生活にとって銅鑼とシンバルは文化的価値がある重要な楽器とされています。銅鑼とシンバルはムオン族コミュニティのあらゆるイベントで鳴らされることから宝物として扱われています。

ホアイ ムオン族の銅鑼とシンバルのセットは12個あり、新築祝いの儀式や結婚式、畑仕事を始める儀式など24の儀式や祭りで演奏が行われます。

ソン 現在、北部ホアビン省タンラク県には数百セットの銅鑼とシンバルを保存されており、その中でもフービン村では、村のどの家庭にも少なくとも1個の銅鑼があり、村全体でおよそ400個を保存しています。この数百年、フービン村の住民は困難な生活を送っているものの、銅鑼とシンバル1個も売ったことがありません。

ホアイ また、現地行政府は住民と力を合わせ、銅鑼とシンバルの保存や伝統祭りの復活に取り組み、国内外の観光客に銅鑼とシンバルのメロディーを紹介することが狙いです。「夏季に入る」という伝統的な祭りが復元され、その祭りで400個あまりの銅鑼とシンバルの合奏によるメロディーが響き渡り、ムオン族の独特な文化価値への誇りを芽生えさせました。

少数民族の音楽を保存する人々 - ảnh 3 子どもに銅鑼の演奏方法を教えているバナ族の職人アビュさん

ソン 一方、伝統音楽の保存事業で最も大きな成果を収めているのは中部高原地帯テイグエン地方に住む各少数民族の銅鑼演奏に関する文化の保存ですね。

ホアイ テイグェン地方の銅鑼文化が2005年にユネスコ=国連教育科学文化機関により、無形文化遺産として認定されました。地元の人々は銅鑼の音を通じて、自らの悲しみ、喜び、怒り、期待などを示すことができます。昔から、地元の人々は赤ん坊が生まれた時や、亡くなった人がいる時など、人生の中で起こるさまざまなことと冠婚葬祭に銅鑼をよく使います。

ソン また、テイグェン地方の人々は銅鑼が人間と神との橋渡し役を演じることができると信じています。銅鑼はテイグェン地方の人々の生活にとって欠くことのできないものと言っても過言ではありません。

ホアイ テイグェン地方コントゥム省に住むバナ族の職人アビュさんは銅鑼に深い愛情を持っていて、この文化遺産の維持、保存のため、地元の子供たちに銅鑼の演奏方法を熱心に教えています。

ソン コントゥム省ゴックベイ村にあるダンチャンコン小学校に在学している生徒数はおよそ700人ですが、ほとんどがバナ族の生徒です。この学校の特別なことはこれらの生徒はだれもが銅鑼演奏に興味を持っているということです。授業が終わった時や日曜日などの休日に、校内は銅鑼の音が響き渡っています。

ホアイ この学校では長年、アビュさんのような銅鑼の職人に頼んで、銅鑼の演奏を教えているのです。アビュさんはダン・チャン・コン学校の生徒を始め、若者たちに銅鑼の演奏のやり方を教えるだけでなく、銅鑼文化に関する見識も伝えています。また、壊れた古い銅鑼を集めて、修理もします。

ソン テイグエン地方の銅鑼文化の保存事業が成功している要因は、アビュさんのような人が若者に熱心に教えていることはもちろん、この文化が博物館や劇場にあるのではなく、共同体というコミュニティの中で生きていることにあるといっていいと思いますね。

ホアイ 今月ザライ省で行われたテイグェン地方の銅鑼・シンバル・フェスティバルは、この空間の拡大を目指すものです。ザライ省文化スポーツ観光局のファン・スアン・ヴ局長は次のように語りました。

(テープ)

「今回のフェスティバルは、コミュニティを目指すものでした。コミュニティは銅鑼文化の持ち主ですからね。ザライ省では、2017年から、全ての町などが年一回銅鑼・シンバル・フェスティバルを行うようにしています。」

ホアイ 伝統音楽を始め、伝統文化を保存するためには、その文化が生きている空間を保存・拡大させるのが最も重要ですね。ではおしまいに、一曲お送りしましょう。

(曲)

「 」をお送りしました。今日のハノイ便りは、少数民族の音楽保存についてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。

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