カインさん
ハノイ市内のバッダン通りに住むファン・チャック・カインさんは古い新聞や古書の収集家として知られています。
彼の家を訪れると、古書などが第二の壁のように高く並んでいるのが見えます。また、階段脇やそれぞれの部屋は古書の集積場となっています。
30年間にわたって、カインさんが収集してきたこれらの書籍は、種類が多く、トン単位で数えられるほどたくさんあります。これらの中には、多くの貴重な書籍があります。例えば、ベトナム地誌、ベトナム54民族、1953年から2014年までのベトナム統計年鑑などの書籍です。カインさんは書籍のみならず、各種の新聞や雑誌を収集しています。
彼にとって、古書収集はまるで奇縁のようです。カインさんは次のように語りました。
(テープ)
「本には魂があるようです。3冊でワンセットの本を入手していますが、その中の1冊が欠けていたため、本屋さんにその本を探しに行こうとしたとき、全く偶然、ある人が私の家にその本を売りに来たんです。とても、びっくりしながらも、嬉しかったです。」
かつて、カインさんは、総合大学の図書館の職員だったので、各種の書籍と接触するチャンスがあり、古書収集という趣味を持つようになったそうです。退職後、古書を収集する為に、彼は、廃品回収業者に注文しました。当時、古書の価格は高くはないですが、価値のある本を選ぶ為には時間がかかりました。カインさんの妻マオさんは「当初の家庭の生活がまだ困難になっているものの、夫の趣味を支持してきた」と明らかにし、次のように語りました。
(テープ)
「当時、子どもが小さくて、沢山いるため、家庭の生活は大変でしたよ。私はアルバイトをせざるを得ませんでした。主人は、書籍の収集だけに夢中になって、何も手伝ってくれなかったんです。主人の全ての給料は書籍の購入に用いられました。私の給料は、家族全員の食生活に充てました。」
現在、カインさんは書籍に関するデータシステムを国際基準に従って構築してきました。多くの外国人研究家が、カインさんの家に行って、首都ハノイやベトナムの国土などに関する資料をかなり十分に探すようになりました。ある読者がカインさんに宛てた手紙の中で、カインさんを「過去、現在、将来の忠誠人」と呼んでいました。カインさんの本屋さんの常連客であるレ・シ・トウさんは「この本屋のお陰で、文学が好きになり、そして文学教師になった。」と明らかにし、次のように語りました。
(テープ)
「学生時代に、本はなかなか入手が大変でした。大学の図書館から1冊の本を探すためには、様々な手続きが必要でした。当時、ハノイ市内には、一軒だけの本屋さんがあったようです。お金がなければ、本を入手できないわけでした。そこで、カインさんの本屋さんへ本を読みに来たんです。ひいては、本を無料で貸してもかまいませんでした。カインさんは生徒、学生にはお金がないと思うからです。」
常連客であったこともあり、現在、カインさんの友人である日本人のタカオ教授はカインさんに「あなたは定年退職をする権利がない。なぜなら、私たちは貴方を望んでいるから。」と言いました。こうした理由で、高齢者になったカインさんですが、依然として、毎日、古書収集に夢中になっています。