(VOVWORLD) - テイグエン地方に居住しているエデ族にとってズゥオ・カンは単なる地酒でなく、神様に奉納する飲み物として多くの儀式に欠かせないものとなっています。
ベトナム中部高原地帯テイグエン地方の特産を語るならば、ズゥオ・カン(Ruou can) という地酒を抜きには語れません。ズゥオ・カンとはテイグエン地方で伝統的な方法で醸造し、壺に入った米のワインで、「壺酒」(Che ruou)とも呼ばれています。テイグエン地方に居住しているエデ族にとってズゥオ・カンは単なる地酒でなく、神様に奉納する飲み物として多くの儀式に欠かせないものとなっています。
ズゥオ・カンを飲む |
テイグエン地方にあるダクラク省ククイン県エアティエウ村に住むエデ族の一人ホヌオン・ビャさんは、コーヒーを収穫したばかりですが、ズゥオ・カンの酒造りに着手しました。ホヌオン・ビャさんの家族は全員、壺を洗ったり、コメや籾殻、バナナの葉など酒造りに必要な原材料を準備したりしました。今年は、旧正月テトのために、ズゥオ・カンの壺を8個作ることにしました。
ホヌオン・ビャさんによりますと、美味しいズゥオ・カンを作るためには、麹をはじめ、よい原材料がとても重要ですが、それぞれの家族は秘密のコツがあります。ズゥオ・カンの作り方は簡単です。米を固めに炊き上げてから籾殻、トウモロコシ、タピオカなどと混ぜて乾燥させます。米に対して4~5%の量の麹を数回に分けて散布します。麹は米などの穀物に食品発酵に有効なカビを中心にした微生物を繁殖させたもので、米と地元の何種類かの葉から作ります。
麹を撒いた米飯を入れる容器は、バナナの葉を敷いた籐でできた籠を用います。エデ族は蒸し煮した籾殻を容器の底に5~6センチの厚さに敷き、ご飯を乗せます。甘酒のような匂いが生じたら、糖化が十分に行われたと判断し、容器の中身を発酵用の小さな壺に移します。内容物の中央に穴を掘り、籾殻を壺一杯に詰めてバナナの葉などで蓋をし、数日間発酵させます。
ズゥオ・カン造り |
発酵が完了したズゥオ・カンを飲む際には蓋を開けて上部の籾殻を取り除き、水を注いで米粒に浸透するまで30分ほど待ちます。吸管酒として壺に差しこんだ竹の管から直接飲みます。壺の中身が少なくなったら水を足して飲み続け、保存できないので、その日のうちに飲みきります。
麹はお酒の味と香りを決めるものなので、かつて、麹を作るコツはその家族の人以外、絶対に外に伝えません。ですから、ズゥオ・カンの味と香りは家庭によって異なります。ホヌオン・ビャさんは次のように話しています。
(テープ)
「伝統的な麹は、森から採った木の葉や皮から作るもので、とても安全です。そして、その麹は家族によってやり方が違うので、お酒の香りと味も違いますよ。」
エアティエウ村では、55歳のマ・パムさんは、美味しいズゥオ・カンを造ることで有名です。子供の頃に親から酒造りのコツを受けたマ・パムさんは近年、そのコツを外の人にも教えています。大量に造るため、伝統的な麹ではなく、市場で売っている麹を使う人が増えており、ズゥオ・カンの質が減りつつあるからです。エデ族の伝統的な酒造りの衰退を心配しているマ・パムさんは若者に伝統的な方法を教えています。マ・パムさんの話です。
(テープ)
「我が家はズゥオ・カン造りの長い歴史があります。私は、エデ族の伝統的な酒造が無くならないように、できるだけ、若者にそのやり方を伝えたいと思っています。」
エデ族を含むテイグエン地方の少数民族は、ズゥオ・カンを神様の飲み物として見なしており、このお酒を飲むと、幸せや楽しみが訪れてくると考えています。そのため、ズゥオ・カンは、村と家族のイベントなどに欠かせません。エデ族などの文化を支えるものだと言っても過言ではないでしょう。
そして、一つの壺の周りに約10人が座って壺に差しこんだストローのような竹の管から直接飲みながら、おしゃべりをすることは、コミュニティの団結強化に役立つとされています。