ベト(越)族の伝統的な村(Lang)には村の入り口となる門、集会所、ガジュマルの木、農園、池などがお馴染みとなっています。住民の生活は自然とよく調和しています。こうした村の構築はベト族の稲作作業に便宜を図りベトナムの典型的な農村風景を作り出してきました。
ベト族の古い村は青々とした竹やぶの木々に囲まれてきました。村の門は日常生活と信仰生活上にも重要な建築物となりました。それぞれの門は独特の建築様式を持っていますが、いずれも農村風景とよく調和がとれています。首都ハノイの中心地から西方へおよそ50キロのところにあるドゥオンラム村は昔のままの姿を保っています。その中にある1553年に建てられた村の門は独自性を誇っています。建築家レ・クァン・ゴックさんは次のように語りました。
(テープ)
「この門はシンプルですが、なぜ魅力があるのでしょうか。おそらく、これはガジュマルの木、曲がりくねった道、蓮の池がある空間にあるからです。そんな穏やかな農村風景にこうしたシンプルな門は美しさを増して、写真家やアーチストたちによく讃えられています。」
ドゥオンラム古い村
ベト族の伝統的な村には井戸も欠かせない存在でした。井戸は「村の目」と考えられ、農村の平穏な生活を反映する鏡とされてきました。民間文化研究者のチャン・ミン・ニュオンさんは次のように述べています。
(テープ)
「今も北部の平野部には古い村の井戸が残っており、住民らに使用されています。井戸は土や石など、様々な資材で造られ、形は色々です。また、お寺、集会所、廟などの正面にも井戸があり、神聖なものとなっています。」
村にはメイン道路が集会所へと導きます。集会所は神聖なところと考えられ、風水面で良い場所に建設されます。集会所は村の守護神、つまり村の設立者であり、国に対して功労のあった人物を祀るところです。また、集会所は村の祭りや重要な行事が行われるところでもあります。さきほどの建築家レ・クァン・ゴックさんは次のように話しました。 (テープ)
「集会所は広い境内に建てられ、幹線道路から離れたところにあります。豊かな村の集会所は立派であるのに対し、貧しい村の集会所は小さいです。」
村の集会所
総合的に見ると伝統的な村の構築には連鎖性があることがわかります。青々とした竹やぶの木々の傍らレンガで敷き詰められた道が続きます。村には多くの路地が絡み合っています。ベト族の住宅の建築様式は簡素ですが、生活習慣と気候に調和しています。住宅には中心となる主屋とハナレの家、わきの家、台所、広い庭、そして花壇があります。
村の構築は生活に相応しいことから文化的社会的風習を作り出してきました。長い歳月を経ながらも、こうした村の構築と住民の風習は維持されており、農村の平穏な生活を作り出しています。