先ごろ、ベトナム南部メコンデルタにあるソクチャン省で、少数民族クメール族のオク・オム・ボクという祭りが行われました。オク・オム・ボクは、クメール族の最大の祭りで、この民族の文化や信仰を物語っています。

ベトナムの54の民族の内、130万人の人口を擁するクメール族は最も人口が多い少数民族の一つで、チャビン省、ソクチャン省、アンザン省など、南部メコンデルタの各省に集中的に居住しています。

河川が織り交ざるメコンデルタに居住しているこの民族は、魚やエビから作られた漁醤をよく食べています。また、船の種類も豊富で、その中で、「ゴー」(Ngo) と呼ばれる長さ30メートルの細長い船は、クメール族の精神生活で最も重要なものです。クメール族の最大の祭りとして10月の満月に行われる「オク・オム・ボク」祭りで、豊作の祈願を意味する「ゴー」という船のレースがあります。祭りの目玉であるボートレースは、約50人の男性が「ゴー」に乗ってスピードを競い合います。

このボートレースに参加するチームの多くは、この地域の寺院に属しています。ボートの多くは寺院の所有なんです。そして、勝者の賞金はその寺院に寄付されることが一般的です。レースが始まる約1ヶ月前、各寺院は、周辺の若者の中から、元気な人を集めてチームを作ります。そして、毎日のように、夕方になると、練習をします。今年の祭りを準備するため、各チームは熱心に練習しました。ソクチャン省ミトゥ県ミトゥアン地区にあるタムソック寺のチームの一員ザイン・ティエウさんはこの5年、オク・オム・ボク祭りのボートレースに参加しています。このレースが大好きなザイン・ティエウさんは、いくら忙しくても、1日も休まずに、一生懸命練習しました。ザイン・ティエウさんの話です。

（テープ）

「このスポーツが好きで、毎年、このレースに参加しています。練習のため、仕事を早めに終えるようにしていて、毎夕方練習しています。今年は5回ですが、団結心が高いこのレースに参加することができて嬉しく思います。」

ソクチャン省ミトゥ県ミトゥアン地区にあるタムソック寺のチームは、最も有名なチームの一つです。このチームは国内だけでなく、カンボジア、シンガポール、中国、タイでのレースにも参加したことがあります。今年のレースを準備する、タムソック寺は、船を補強するとともに、優れた100人の若者を選びました。タムソック寺のボートレースチームのリーダー ザイン・カンさんは次のように話しました。

（テープ）

「今年、タムソック寺の仏教徒と選手達は団結してボートレースの準備作業を行いました。夕方になると、約70人の選手が練習に来ます。皆、団結して積極的に練習しました。」

一方、ソクチャン省チャウタイン県アンニン地区にあるトゥム・ヌップ寺でも、ボートレースを準備する雰囲気も盛り上がりました。練習の時、地元の大勢の住民が応援に来ました。トゥム・ヌップ寺の住職ラム・ヒェップ僧侶は次のように語りました。

（テープ）

「この50年間、トゥム・ヌップ寺のチームは連続してオク・オム・ボク祭りに参加しています。仏教徒達は、生活で困難に直面した時もあったものの、スポーツ精神そしてクメール族ならではの文化保存を大切していて祭りに積極的に参加しています。」

こうしたオク・オム・ボク祭りは近年、ソクチャン省だけでなく、メコンデルタ地域の重要な文化イベントとなっています。