少数民族クメール族はベトナム南部メコンデルタ地域に居住していて豊かな文化でよく知られています。クメール族の文化について触れるならば、その音楽を抜きにして語ることはできないでしょう。それは5つの楽器によるものです。
(五音音楽のテープ)
「フレン・ピンピート」(Phleng Pinpeat)と呼ばれる音楽は、5種類の楽器が五つの音色を出す音楽という意味です。その楽器は、銅製の楽器、鉄製の楽器、木琴、皮革製の打楽器と竹製の笛のような吹奏楽器です。そして、一楽団は7つから9つの楽器を使いこなすのが一般的です。
五音色音楽の演奏
これらの楽器の中で一番重要なのは、竹と木からできたローニートエックという楽器です。長さ約20センチの26本の竹からなるこの木琴のような楽器は船の形をしているので、「船の楽器」とも呼ばれています。演奏者は2本のばちで叩いて鳴らします。もう一つの木製楽器で、ローニートトゥンもあります。この楽器はローニートエックと構造がよく似ていますが、竹は16本しかないので、低音を出すときのものです。これらの木製楽器は演奏に欠かせません。もしこれがなければ、演奏にならないほど重要な存在です。
銅製楽器は、16個のドラ(銅鑼)からなるクオントムという楽器です。演奏するとき、演奏者は2本のばちでドラを叩きます。ドラの厚さにより、音色が変わります。皮革製楽器として、牛皮でできたサムフォーという太鼓があります。
孫に五音色音楽用の楽器を教えるおじいさん
こうした楽器造りには、職人たちの手際のよい腕が必要です。これらの職人たちは、単なる楽器を作るだけではなく、クメール人の豊かな文化の精神を込めた楽器を作るために、工夫をしなければなりません。ソクチャン市に住む職人リー・ファットさんは次のように話しました。
(テープ)
「五色の楽器を作れるようになったのは20年前のことだよ。その時はまだ15歳だった。初めはうまくいかなかったけど、段々にうまくできるようになっていった。この音色を演奏できなければ、この楽器もつくれないですよ。」
五色の音楽は自然、神、人間同士とのコミュニケーション手段で、クメール人の生活に重要な役割を担っています。クメール人のお寺はほとんどが、この楽団を持っています。五つの音色の音楽はかつて、お寺の行事でしか演奏されなかったのに対し、現在は、コミュニティーのイベントでもよく使われるようになりました。ソクチャン市に住むリー・ザインさんは次のように話しています。
(テープ)
「国の支援により、住民の生活が改善されたので、お寺はもちろん、村のイベントでも演奏するために、五種類の楽器を揃える村は多いです。ですから、村のイベントがあるとき、ほかの楽団に頼むことなく、村人が自分たちで演奏できるようになりました。また、ほとんどのお寺には楽団があります。五音色音楽を学びたい若者を対象に、よく教室を開いていますが、興味がなければ、学ぶことができないでしょう。」
五音色音楽を夢中に練習している若者
五音色音楽用の楽器を演奏するためには、心を込めていろいろと練習しなければなりません。現在、多くのお寺では、これらの教室が開かれており、多くの若者が習いにきています。ソクチャン市にあるゾイ寺で習っているラム・クェット・タンさんは次のように話しています。
(テープ)
「習いはじめてから3年経ちました。お寺にお参りに行った時、この楽団を見て好きになり、習うことにしました。最初はとても難しかったですが、頑張って練習したんで、段々できるようになりました。」
五音色音楽は、クメール人の精神のよりどおろ、貴重な財産として現在も大切にされています。