(VOVWORLD) - ベトナム中部クアンナム省テイザン県に住む少数民族コトゥ族は、信仰や祭り、音楽、飲食、服装などに関する多くの伝統文化を保っています。その中には姉妹都市ならぬ姉妹村落を結ぶ儀式があります。
コトゥ族の村 |
ほかの民族にとって姉妹関係を結ぶことはその関係をより緊密にするためですが、コトゥ族にとって各村の間のトラブルや諍いを解決するためです。クアンナム省テイザン県ラン村に住むコトゥ族の一人プローン・プレンさんは次のように話しました。
(テープ)
「生活において各村の間にはトラブルや諍いが発生するかもしれません。これは畑でのケンカや、村の境に関するトラブルなどです。また、コトゥ族の男性が「奥さんを奪う」という習慣がありました。かつて、貧しいので結婚できない男性は、「奥さんを奪う」習慣を使って妻を娶るようになりましたが、他の村の女性を強奪して妻にすることは2つの村の諍いの原因になったわけです。これらのトラブルやケンカを解決しないと、時間が経てば経つほどしこりが大きくなります。コトゥ族は、そのままにしておくことはよくないと考え、姉妹村落を結ぶ儀式を行うことにしました。」
各村が姉妹関係を結ぶことはトラブルや諍いを解決するだけでなく、村と村の間のつながりと相互支援を強めるためでもあります。そのため、これは強制的ではなく、自発的でなければなりません。姉妹関係を結ぶことは、2つの村の長老評議会が話し合ったうえで決めます。先ほどのプレンさんは次のように話しました。
(テープ)
「長老評議会は村人に選ばれた人がやります。評議会のメンバーは、村に貢献した責任ある老人たちです。この評議会は、他の村と姉妹関係を結ぶことを始め、村の課題や問題の解決にあたります。」
姉妹関係を結ぶ儀式のお供え物はかつてはお酒、水牛、山や森でとれた産物の他、コトゥ族が大切にする壺などですが、近年、水牛の代わりに、水牛の模型を使うようになりました。先ほどのプレンさんは次のように話しました。
(テープ)
「儀式で、一つの村が花嫁の家族として、残りの村は花婿の家族として見なされます。花婿の家族は水牛、壺、米を用意するのに対し、花嫁の家族は料理を作るとともに、太鼓やドラを準備して歌と踊りの披露にあたります。」
儀式の日の早朝、祈祷師は太鼓とドラのメロディーと合わせて儀式を始めます。儀式の冒頭、祈祷師は神様に報告し、2つの村の和解と団結を祈ります。儀式で、祈祷師はいつも東に向かって儀式を主宰します。これは、日の出の日差しを受けて村人に伝え、今までの怒りや不満を消すためという意味があります。その後、2つの村の人たちは今までのケンカを無くして相互理解を深めるため、互いに話し合います。先ほどのプレンさんは次のように話しました。
(テープ)
「年齢を問わずお年寄りから子供まで2つの村の人たちは互いに、相手側の風俗習慣や村の境界線などを理解するために徹夜してでも話し合います。この話し合いは歌垣の形でも行われるときもあります。」
儀式の後、2つの村の人たちは友人になり、共に畑仕事をしたり、共に森へ行ったりします。また、2つの村の男女は自由に付き合って結婚できるようになるわけです。