(VOVWORLD) - アサン村の人々は、「森は家で、木は子供である。森を家のように、木を子供のように愛する」とよく言っています。
中部のクァンナム省、トゥアティエンフエ省をまたがるチュオンソン山脈に居住しているコトゥ(Co Tu)族は大自然との密接なつながりを持つ暮らしをしている少数民族です。そのため、コトゥ族は大自然を大切にする習慣がたくさんあります。その中で、森の恩に報いる儀式が大自然を大切にするこの民族の考えを示すものです。
森の恩に報いる儀式 |
クアンナム省テイザン県アサン村は、ベトナム語では「ポム」、日本語では「ラオスヒノキ」と呼ばれるヒノキ科の針葉樹の原生林に包まれた谷にあります。海抜1500メートルのこの原生林の面積は450ヘクタール以上で、そこには2000本以上のポムが生息しています。ポムは、香りもありますし、キクイムシによる被害もなくので、家具や美術手工芸品などによく使われます。そのため、ポムの原生林は減りつつあります。一方、アサン村の周辺にあるポムの原生林は昔とほとんど変わりません。それは、大自然を大切にするコトゥ族の意識によるものです。
アサン村の人々は、「森は家で、木は子供である。森を家のように、木を子供のように愛する」とよく言っています。森からいかなるものをとろうとしたら、神様に申し込まなければなりません。そうしないと、病気になったりするほか、村に罰金を科されます。アサン村に住むポ・ローン・プレンさんは次のように語りました。
(テープ)
「家を建てるため木を切りたいとすれば、村長の意見をもとめなければなりません。そして、木を切るときは、周りの木の影響を与えないようにしなければなりません。そして、原生林で木を切ってはいけないということです。」
原生林のポム |
森を大切にするこうしたコトゥ族は、森の恩に報いる儀式を年中の最も重要な行事とみなしています。森の恩に報いる儀式は新年に行われ、その年に森からたくさんの贈り物を受けたいという気持ちを表すのが狙いです。コトゥ族の生活は昔から、森と密接につながっていますので、森の神様に供え物をして感謝すれば、多くの幸運が訪れてくると考えられています。お供え物はお酒、鶏、お魚、おこわ、果物などです。アサン村の村長ア・ラン・ダンさんは次のように話しています。
(テープ)
「森の恩に報いる儀式は昔から伝わるものです。昔、水牛などを神様にお供えして、神と人間とのつながりを強くするためのものでしたが、現在は、ポムという木を守るために、神に支援をお願いするものです。」
儀式で披露される踊り |
新年に森の恩に報いる儀式を行わなければ、畑仕事をすることや、ほかの村との売買をすることがだめです。戦争などの影響で、この儀式を行わなかった年もありましたが、森林破壊が深刻な問題になっている現在、現地行政府はこの儀式を広げようとしています。テイザン県党委員会のブリウ・リエック委員長は次のように語りました。
(テープ)
「村人はこの文化が保存・開発されていることを喜んでいます。現地行政府は村人と話し合って、ほかの村でもこの儀式を催すことを計画しています。森を大切にする文化はコトゥ族のものだけでなく、この地のものでもあるようにしています。また、この文化は観光客を魅了することができると思います。」
森はこれからも、コトゥ族の共通の家であり続けるでしょう。