(VOVWORLD) - コム族は伝統的な文化をきちんと守っている民族として知られています。その中で、口琴もその一つの文化です。
口琴(こうきん)といってもわかりにくいかもしれませんが、口と琴と表記します。口琴は世界中の様々な民族が持つ楽器の一つで、金属、あるいは竹、木などを加工した弁と枠を有します。日本ではアイヌ民族が使用しています。ベトナムでは、口琴は、いくつかの少数民族にとって最も身近な楽器です。その中で、コム族は、口琴を、愛を伝える道具として見なしています。
「サローン」口琴を持っているコム族の男性 |
コム族はもともとラオス北部に集中して居住していましたが、100年ほど前に、ベトナムに移住してきました。2009年の国勢調査によりますと、コム族の人口は7万3千人です。その大半は、ラオスと国境を接しているベトナム中部ゲアン省の西方にある山岳地帯ですが、北部のソンラ省やライチャウ省にも住んでいます。
ベトナム54民族の中で、コム族はそれほど人口が多い民族ではありませんが、伝統的な文化をきちんと守っている民族として知られています。その中で、口琴もその一つの文化です。
(テープ)口琴の音
コム族の言葉で「サ・ローン」(Th’roong)と呼ばれる口琴は、世界各国の口琴のように歯に付けて奏するのではなく、むしろ唇を付けて演奏します。すなわち、楽器自体はより口腔の自由が効く位置に置くことで、口腔を共鳴器として自在に形作ることができ、更に柔軟な表現を可能としています。長さ約14センチ、幅が約15ミリのその口琴は竹でできますが、弁は銅製です。
コム族の口琴は信仰目的に使用してはいけません。この楽器は、男性が自分の気持ちを女性に伝えたいときに使うのが一般的です。ディエンビエン省に住むコム族のロ・ヴァン・アンさんは次のように語りました。
(テープ)
「男性が夜、彼女を探しに出かけるとき、いつも口琴をもって出かけます。女性の家に着いたら、口琴を鳴らし女性を呼びます。その女性は男性の口琴の音が気に入れば、男性を家の中に入れて話し合います。」
口琴の音は女性に対する男性の気持ちや愛情を物語るものです。同じ口琴でも、吹く人が違うと、その音色も異なります。そのため、多くの男性の口琴の音の中から、女性は彼氏の口琴の音を区別することができます。
コム族の口琴は、「床を叩く」という習慣に繋がります。コム族が高床式の家に住むので、男性が女性を呼ぶとき、口琴を吹くと共に、高床式の床を叩くことからその名になる習慣です。コム族の一人クアン・ヴァン・カさんは次のように話しました。
(テープ)
「女性がその男性がもし気に入れば、男性を家の中に入れて、囲炉りのそばに座って話し合います。互いに手を握りながら話し合うだけで、体を合わせてはいけません。女性の両親が同意すれば、邪魔などはしませんが、もし同意しなければ、囲炉りの火を大きくします。それは、「帰れ」と合図を男性に示唆する行為です。」
3、4回ぐらいにわたって床を叩いた後、もしそのカップルが結婚したければ、男性は女性の農作業を手伝い、自分の能力を示します。女性の両親が結婚に同意すれば、男性にご馳走をします。
コム族の口琴「サ・ローン」は、男女の恋愛にとって欠かせないもので、すごく小さく簡単なのですが、コム族の人々に大切にされています。