(VOVWORLD) - ベトナムの54民族の中で、コム族(Kho Mu)はそれほど人口が多くはありませんが、伝統的な文化がきちんと守られている民族として知られています。中でも、踊りや民謡などの伝統芸能は日常生活に欠かせないものとして大切に保たれています。
コム族の女性 |
サカウ(Xa Cau)、ムンセン(Mun Xen)、プテン(Pu Thenh)とも呼ばれるコム族はもともとラオス北部に集中して暮らしていましたが、100年ほど前に、ベトナムに移住してきました。2019年の国勢調査によりますと、コム族の人口は9万人です。その大半は、ラオスと国境を接するベトナム中部ゲアン省の西方にある山岳地帯で暮らしていますが、北部のソンラ省やライチャウ省にも住んでいます。
コム族の生活は大自然と緊密につながっており、コム族の信仰や音楽、行事などに大自然を思わせる要素がよく見られます。音楽においては、「オムディン」(Om ding)、「ダオ」(Dao)、「トット」(Tot)、「ピトム」(Pi tom)など、コム族の楽器のほとんどが竹でできています。そのため、これらの楽器は、大自然の音を出すと言われています。
その中で、「ダオ」はコム族の人々がよく使っている打楽器です。「ダオ」は数本の竹を並べてできた楽器ですが、元々は鳥や動物が田畑を食い荒らすことから守るため、この楽器の音で追い払っていました。しかし、この楽器は人間の気持ちを表現することもでき、よく民謡と合わせて使われています。特に、男女の恋愛をサポートする手段としても使われています。
ライチャウ省タンウィエン県タムフェ村に住むコム族の一人ホアン・ヴァン・ティエンさんは次のように語りました。
(テープ)
「コム族の伝統楽器はすべて竹で出ています。中でも「ダオ」は代表的な楽器で、コム族の男性は誰でも「ダオ」を使えます。若い男性は女性を好きになると、夜、女性の家の前で「ダオ」を打って自分の気持ちを伝えます」
コム族の踊り |
コム族の伝統芸能について触れるならば、「トム」という民謡を抜きにして語ることはできないでしょう。男女の掛け合いで歌われる民謡「トム」は、叙事詩的で、愛情溢れる民謡です。民謡「トム」はいつでもどこででも歌われてますが、村や家族の楽しい集まりでよく歌われます。
この民謡は2人の掛け合いで歌うのが一般的ですが、集団で歌うことも珍しくありません。そして、一人でも歌うこともあります。「トム」を歌うのは、自分の気持ちを相手に示すのはもちろん、畑仕事の疲れを癒すためでもあります。民謡「トム」の特徴の一つは、竹でできた「ピトム」という笛を吹きながら歌うことですが、楽器も何も使わず、歌うこともあります。
コム族の人々は伝統芸能を自らのアイデンティティを支えるものとしてその維持と開発に力を入れています。現在、コム族の村のほとんどには伝統芸能クラブなどがあります。
ライチャウ省タンウィエン県タムフェ村に住むホアン・ティ・トゥさんの話です。
(テープ)
「コム族の伝統文化を守るために、村の伝統芸能グループを立ち上げました。14人からなるグループは国の支援も受けて週2回練習しています。また、村のお年寄りに頼んで、子どもたちに踊りや民謡などを教えてもらっています」
近年、コム族の伝統芸能は観光客を引き寄せる観光商品となっており、住民の収入増加に役立っています。これによりコム族の伝統芸能の維持・開発につながっていくことでしょう。