(VOVWORLD) - 北部山岳地帯に居住している少数民族ザオ族は、豊かな文化があるだけでなく、多くの伝統的職業を持っていることで知られていますが、その中で最も有名なのは伝統的な製紙方法です。伝統的な紙の質を決める工程の一つは流しずきで、この工程に使われる紙づくり用具は簀桁(すけた)です。
ザオ族の伝統的な紙は、ベトナム北部山岳地帯に生息している「ヴァウ」(Vau)という竹から作られ、薄い黄色を持つ丈夫な紙です。この紙は、紙製の祭祀用の品々作るほか、墨汁で対句などを書くのによく使われています。
簀桁を編んでいるロ・サイン・フィンさん |
ザオ族のこの伝統的な紙の有名な産地は北部ハザン省バククアン県タインソン村です。村のお年寄りの話によりますと、タインソン村の人々がこの伝統的な職業を始めたのは約100年前のことでした。現在、タインソン村には100世帯のザオ族が住んでいますが、そのほとんどがこの紙づくりに従事しています。しかし、紙作りに欠かせない用具「簀桁」を作れる職人はロ・サイン・フィンさんだけになりました。フィンさんの話を聞いて見ましょう。
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「かつて、簀桁が壊れた時、村人は私の祖父の家に持っていって、修理を頼みました。私は、祖父からこの技術を教えてもらい、今では祖父の代わりにこの仕事をしています。」
ロ・サイン・フィンさんによりますと、簀桁は地元に生息している「ヴァウ」(Vau)という「竹ひご」を使って編まれた簀に桁を取り付けたものです。繊細な竹のすだれのような簀を編むにはヴァウを細く割ってつくられた細い割り竹が使われ、一定の間隔で割竹の締まり具合を均一にしなければなりません。強固で平らな簀にするため、割竹を爪楊枝のように丸く割らなければなりません。簀のサイズは長さ90センチ、幅30センチですが、一枚の簀を編むのに一週間ほどかかります。
編んだ後、直射日光に当てて乾燥させます。これは簀桁の強さを増加させる効果があります。また、編む前に、1週間ほど割竹を囲炉りの上にかけることも、簀桁の寿命の延伸につながります。
簀桁を乾燥させているフィンさん |
タインソン村に住むチエウ・ティ・ムイさんは、市場でよく売られている簀桁を使ってみようとしましたが、高い上、紙質に悪影響を与えたと述べ、次のように語りました。
(テープ)
「よく市場で売られている簀桁を使ってみましたが、使いにくかったです。また、フィンさんが編んだ簀桁ほど、強固ではない。フィンさんの簀桁は手ごろな値段だけど、2、3年は使えますよ。」
フィンさんにとって簀桁を作る仕事は安定した収入源となっていますが、彼が最も望むことはこの仕事を次世代に伝えることです。フィンさんの話です。
(テープ)
「私は70歳近いので、どうしてもこの仕事を次世代に伝えたいと思いますが、この仕事に本当に興味を持つ人は少ないです。この仕事は極めて注意深さと、いろいろな苦労が求められるからです。数年前は、我が家の孫も学んだけれど、最後まで行き届かなかったです。」
こうした事態を前に、地元の行政府は簀桁を作る仕事の保存計画を立てています。タインソン村の村長ロ・ドゥク・チューさんは次のように話しました。
(テープ)
「ハザン省では、「簀桁」を作れるのはタインソン村のロ・サイン・フィンさんだけです。これはザオ族の伝統的な紙作りに欠かせない用具なので、若者にこの仕事を受け継ぐことを奨励する政策が必要です。これは、地元の伝統文化の保存にも役立つと思います。」
数百年の歴史があるザオ族の伝統的な紙作りとその製紙の用具「 簀桁」はこれからも、ザオ族の人々の生活において大切にされてゆくことが期待されています。