少数民族ジェチェン族は音楽が好きで、様々な楽器を使用します。その中で、一番有名なのは「ディン・トゥット」という楽器です。これは簡単なものですが、ディン・トゥットは、伝統的な踊り・民族衣装と合わせて演奏されますので、とても魅力的だといわれています。
ジェチェン族は、音楽を生活から切り離せない存在とみなしています。ジェチェン族の音楽について触れるならば、「ディン・トゥット」を抜きにして語ることはできないでしょう。ディン・トゥットは、竹製の笛ですが、その笛は、豊作祝い祭りで竹笛を吹いて苗の魂を呼ぶ儀式から生まれたと言われています。
ディン・トゥットの演奏
ジェチェン族の祭りでは、竹製の楽器10個セットがよく使われていますが、その中で、どんな祭りでもなくてはならない楽器はディン・トゥットです。ジェチェン族の人々は、ディン・トゥットを聴きながら生まれ、ディン・トゥットの祝い事の中で結婚し、そして、ディン・トゥットの音の中でこの世を去ると言われるほど、生涯ディン・トゥットとの強いつながりを持っています。
ディン・トゥットは、長さが違う6本の竹を並べて1セットにした笛です。ディン・トゥットを演奏するとき、6人の男性が女性の衣服を着てそれぞれの笛を吹きます。中部クアンナム省ナムザン県に住むジェチェン族の一人ゾ・ラム・ニアさんは次のように話しています。
(テープ)
「一本の竹を6等分に切って節にします。それぞれの長さは違います。長く切られた節は太い一方、短く切られた節は小さいです。ディン・トゥットは村の大きな祭りにとって欠かせない存在です。お正月の前になると、ディン・トゥット作りを始めます。」
ジェチェン族の一番大きな祭りである新米祭りでは、ディン・トゥットの演奏は最も重要な役目です。6人の男性が女性の衣服を着てそれぞれの笛を吹きます。一方、女性たちは、ディン・トゥットのメロディーと合わせて踊ります。クアンナム省タックミ県に住むジェチェン族の一人ヒエン・ティエップさんは次のように話しています。
(テープ)
「ディン・トゥットはジェチェン族の文化の特色のひとつです。私のような若者たちは前の世代からこの技術を習うために取り組んでいます。こんな伝統的芸能はどうしても守らなければならないからです。」
こうしたディン・トゥットの演奏はチームワークが強いです。6人の中の最初に立った人がチームリーダーで、彼の指揮の元、ディン・トゥットが演奏されます。ディン・トゥットの演奏は8つのメロディーがあり、それによって使う場所も踊りも違います。クアンナム省に住むジェチェン族の一人ゾ・ラム・ヴァンさんは次のように話しています。
(テープ)
「ディン・トゥットの吹き方は難しいですが、前の世代から習います。次の世代がディン・トゥットを習うのはジェチェン族の伝統保存に役立つと思います。」
ジェチェン族の生活はかなり変化していますが、お祭りなどでのディン・トゥットの演奏は昔のまま、変わっていません。