ベトナム中部高原地帯テイグエン地方に居住している各民族、特にチュル族にとってカゴは最も親しみ深い生活用具です。そして、カゴは単なる用具であるだけでなく、チュル族の文化の表れでもあります。
テイグエン地方に足を運ぶと、男女と年齢を問わず、カゴを背負っている人の姿をよく見かけます。畑へ行くときも、市場へ行くときも、カゴはまるで地元の人の同行者のようです。チュル族にとって、カゴは飾り物でもあります。綺麗な模様が施されたカゴはチュル族の職人の巧みな技で作られたものです。
カゴを編んでいるチュル族
カゴを作るのは、原料を選ぶことから一歩一歩編むことまで複雑です。原料は森で取った竹、籐、木の皮などですが、丈夫で綺麗なカゴを作るには厳格な原料選びが重要です。そして、編み方もとても複雑で、優れた職人でないと、美しい仕上げになりません。
ハノイから来た観光客グエン・ヴァン・ドクさんの話です。
(テープ)
「他の民族、特に北部の民族のカゴはほとんど模様がありませんが、チュル族のカゴは綺麗な模様が施されます。その編み方から模様の施し方まで全てが巧みの技です。V文字やひし形の形をする模様は人の目を引きつけてカゴの最も際立つ部分です。」
カゴを大切にしているチュル族は、その編み方を若者に伝えるようにしています。現地行政府も職人たちも、頻繁に教室を開いて編み方を若者に教えています。ラムドン省ドクチョン県フーホイ村に住むマ・バンさんは次のように話しています。
(テープ)
「かつて、カゴを編める若者は少なかったですが、現地行政府は編み方の教室を開いていて多くの若者が学びに行きました。また、村長の方も教室を開いています。」
職人ヤ・ヒエンさん
フーホイ村で、職人ヤ・ヒエンさんはカゴの編み方を若者に教えることに先頭に立っています。8歳から編み方を習いこの60年カゴを編んでいるヤ・ヒエンさんの8人の子供は全員、カゴの編み方を身につけました。ヤ・ヒエンさんは、若者に教えることは、この伝統的な職業の保存だけでなく、若者の収入増加に寄与すると語り、次のように話しています。
(テープ)
「チュル族のこの伝統的な職業の保存は、私がいつも考えていることです。なくならないように取り組んでいます。国の支援を受け、これからもたくさんの教室を開いて全ての技術を教えてゆきたいと思います。」
畑や市場へ行くときだけでなく、祭りや結婚式のときにもよく使われるカゴは、今後も、チュル族の生活の中で存在し続けることでしょう。