バナ族は中部高原地帯に住んでいる少数民族の中で多い人口を抱えており、同地ならではの独特な文化の一翼を担っています。バナ族はボナム、コンクデ、アラコン、クパンコンとも呼ばれ、言語は南アジア語族のモン・クメール語系に属します。2009年の国勢調査によりますと、バナ族の人口は22万7千人を超え、中部のビンディン省やフーイエン省、カインホア省、高原地帯のザライ省やコントゥム省などに散在して、焼き畑で陸稲を作っていました。20世紀初頭からバナ族は水稲の栽培を始めたほか、織物、鍛冶、製陶も行っています。また、自然と調和して、暮らしていることから、その集落は川や谷川に近く建てられます。バナ族の母系制は家族同士の関係や婚姻で表れています。それぞれの村の中心地にロン(Rong)という大きなコモンハウスが建てられ、共通の仕事が協議されたり、儀式を行なったり、来客が宿泊する場所とされています。
フェスティバルで銅鑼とシンバルの演奏
バナ族の住居は高床式の家です。かつて、1つの住居に数世代もの人々が住み込んだことから、数百メートルにおよぶ長屋が建てられましたが、現在は核家族のモデルが普及していて、住居は小さくなってきました。バナ族は豊富な精神生活や独特な民族文化を誇り、伝統的な祭りや行事と結び付けられている銅鑼とシンバルのメロディーは代表的なものです。バナ族にとって信仰上の神聖な象徴であるとともに生活面でも価値のある財産とされています。中部高原地帯ダクラク省に住むディン・スルムさんは次のように語りました。
(テープ) Srum
「バナ族は大昔から銅鑼を鳴らす伝統を受け継いでいます。正月や祭りなどで銅鑼を鳴らすと気分が高揚してきます。また、人々の気持ちも湧きあがってきます。」
バナ族の水牛供養の儀式
バナ族の音楽は豊で、楽器も豊富で、管楽器、打楽器、弦楽器などがあります。一方、バナ族の舞踊は行事や祭りでの演奏舞踊の2種類に分けられます。バナ族は豊な民族文学を保っており、叙事詩や昔話など多岐にわたっています。他方、錦織はバナ族の独特な職業とされており、錦の模様は独特かつ豊かで、女性の器用な手先を表します。また、宇宙や天、土地、自然などが紋様に取り入れられています。錦織の職人ラ・ラン・ティ・ミンさんの話をお聞きください。
(テープ) Minh
「14~15才の頃、機織を始めました。伝統職業を受け継ごうと思います。今、お年寄りは機織を教える教室を開き、20から30人くらいの少女を受け入れています。彼らの織物は綺麗ですよ。」
バナ族の行事や祭りとしては両親の恩に報いる儀式や水牛供養の儀式、稲の神に供養する儀式などがあります。祭りは住民にとって豊作を祝う一方で、地酒を味わいながら、銅鑼を鳴らして、楽しむ機会となります。また、祭りを通じて女性の料理の腕も表れます。バナ族の祭りに参加することは面白い体験となることでしょう。