(VOVWORLD) - 祖父母や両親の誕生日を祝う儀式はヌン族ならではのもので、高齢者と家族を大切にする考え方を示しています。
ハノイからおよそ50キロ離れたところにあるバクザン省には5つの少数民族が住んでいますが、その中のヌン族の人口は7万4千人ですが、バクザン省の中で人口が最も多い少数民族です。ヌン族は信仰的な儀式や、伝統的な工芸など豊かな文化で知られていますが、その中で、祖父母や両親の誕生日を祝う儀式はヌン族ならではのもので、高齢者と家族を大切にする考え方を示しています。
ヌン族の人々 |
誕生日祝い儀式に欠かせないものは、「ハンマ(Hang ma)」(冥器)と呼ばれる紙製の祭祀用品のほか、豚、鶏、コメ、お酒、塩、お菓子などです。そして、「バインド」(Banh do)と呼ばれる赤いお餅も必ず用意しなければなりません。これは、森の葉で赤く染められたお餅で、その家族の子どもの手作りです。
誕生日祝いの儀式を催すのは祈祷師です。儀式の冒頭、祈祷師は、ヌン族の伝統的な琴「ティン」(Tinh)を弾きながら、ヌン族の民謡「テン」(Then)を歌って、誕生日を祝福される人の名前と年齢を神様に報告するとともに、その人と家族の健康や幸福を祈ります。ヌン族の人々は、祈祷師が民謡「テン」を通じて神様に語りかけることができると信じているのです。祈祷師がテンを歌う時、家族のみんなはその歌に合わせて踊ります。
(儀式の現場の音声)
聞こえてきたのは儀式の現場からの音声でした。
儀式では冥器が燃やされますが、これは神様に冥器を差し上げ、誕生日のお祝いされる人をどうか事故や病気などから守ってくださいというお祈りを表すのです。また、お供え物として用意された米の上には桃の葉が置かれますが、桃の葉は悪魔を追い払うという効果があると信じられるからです。儀式が終わる前に、祈祷師は、悪魔が家に入れないように、その米を庭に放り投げます。ヌン族の文化の研究者ヴィ・ベト・ズンさんは次のように話しています。
(テープ)
「高齢者も毎年、誕生日を祝う儀式をするわけではありませんが、とても重要な儀式なのです。ヌン族は、それぞれの人には、自分の魂の世話を見てもらう神様がいると考えています。その儀式は、神様を家に招き、これからもその人の世話を見てもらうよう祈願するためのものです。」
誕生日祝いの儀式は徹夜で行われるのが一般的です。儀式を行うとき、祈祷師は、幸運が訪れますように、たまに、その家族の人にお酒を少しあげます。
こうした祈祷師は儀式に欠かせない役目をもっていますが、誰もが祈祷しになれるわけではありません。親や祖父母が祈祷師であったという家族出身の人が祈祷師になるのが一般的です。先ほどの文化研究者ズンさんは次のように話しています。
(テープ)
「祈祷師になりたい人が全員、祈祷師になれるわけではありません。その地の有名な祈祷師4人の同意を受けないと、なれないですよ。祈祷師は人間と神とのつながりという重要な役目を果たすのですから、幾つかの条件を満たさなければなりません。」
誕生日祝いの儀式は今もなお、ヌン族の信仰の中で重要なものであり、この民族の文化を物語るものでもあります。