バナ族の叙事詩

(VOVWORLD) - 2017年4月に、バナ族の叙事詩は、国の無形文化遺産として認定されました。

ベトナムの中部高原地帯テイグエン地方は、エデ族、バナ族、ジャライ族など、様々な少数民族が住んでいます。豊かな文化を誇っているこの地方は、ドラとシンバルの演奏や水牛のいけにえ祭りのほか、叙事詩などで有名です。テイグエン地方の各少数民族の中でも、エデ族の叙事詩は一番有名ですが、バナ族の叙事詩はその特徴を誇っています。

バナ族の叙事詩 - ảnh 1

他の少数民族の叙事詩と同様、バナ族の叙事詩は口づてに伝えられる口承文学詩です。この叙事詩は昔の生活を物語るもので、過去と現在とを、そして、今の人間と先祖とを結びつけると言われています。また、豊かで幸福な暮らしへの祈願や、自然の征服への希望なども反映しています。

(バナ族の叙事詩の現場の音)

テイグエン地方の最も有名な叙事詩は、「ダムサン」(Dam San)というエデ族の叙事詩で、1930年代から有名になりました。それに対して、バザ族の叙事詩が発見されたのは1980年代のことです。ベトナム伝統文芸協会の会長を務めるトー・ゴック・タイン教授は次のように話しています。

(テープ)

「1980年にも、バナ族の叙事詩を発見しました。その前は、その叙事詩は叙事詩の形ではなく、昔話の形で物語られていました。バナ族の叙事詩の中で最初に発見されたのは「ダム・ノイ」という叙事詩です。ノイはバナ族の英雄の名前で、ダムはミスターという意味です。」

タイン教授によりますと、バナ族のダム・ノイ叙事詩は、善と悪との戦いを物語るもので、テイグエン地方に住む少数民族の叙事詩と大体同じです。タイン教授は、ダム・ノイ叙事詩は、ノイさんの結婚、労働、敵との戦いという3つの部分に分けられると述べ、次のように話しています。

(テープ)

「内容は他の少数民族の叙事詩と同様、悪と戦って村を守るというものです。もちろん、異なる点もありますが、侵略者や悪を打ち負かして村に幸福を取り戻す英雄の姿を描くという主な内容です。」

バナ族の叙事詩は、木や草、鳥、動物などの姿を利用して、人間について触れるのが一般的で、生き生きとした比喩的な言葉をよく使っています。そして、語り部は、昔から伝わってきた言葉の他、自分が作り出した言葉をよく使っています。ベトナム文化研究所のレー・トゥイ・リー博士は次のように話しています。

(テープ)

「語り部は、伝統文化に詳しいですし、驚異的な記憶力を持つ人でなければなりません。それぞれの語り部は、昔から伝わってきた叙事詩に基づいて、自分自身の言葉や想像力を発揮して物語ります。」

(バナ族の叙事詩の現場の音)

先ごろのタイン教授によりますと、バナ族の叙事詩の特徴は、聞き手は語り部が見えなく、聞き手と語り部との接触はほとんどないということです。タイン教授の話です。

(テープ)

「語り部は、動きはなく、語ったり歌ったりするだけです。闇で物語るからです。闇が過去の空間を作り出すので、叙事詩の英雄が出てくると信じられています。闇の中で、語り部の話を聞きながら、過去の流れが戻って昔の英雄のことが想像できます。それは、語り部の想像力だけでなく、聞き手の想像力も求められるバナ族の叙事詩の特徴です。」

叙事詩は、いくつもの時代を超えて、口伝えに受け継がれてきました。一つの物語が3日間連続して語られます。バナ族は、叙事詩を聞くことによって先祖とのコミュニケーションができると信じているので、一度参加したら、途中で帰ってはいけません。

現代の生活において、語り部の数が少なくなっているにもかかわらず、バナ族の叙事詩は依然として、その役割を果たし続けています。2017年4月に、バナ族の叙事詩は、国の無形文化遺産として認定されました。これは、バナ族の叙事詩の保存と開発に弾みをつけるであろうと期待されています。

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