(VOVWORLD) - 現在、村長は、昔のままの役割だけでなく、国の法律や政策の展開を村人に働きかけるという役割も果たしています。
ベトナム中部高原地帯テイグエン地方はバナ族を始め、セダン、ザライ、エデなど各少数民族の豊かな文化で知られていますが、これらの少数民族は多くの類似点があります。それはどの村にも村長がいて、村長が村全体のことを決めるという大きな威信があるという共通点です。バナ族の村長は現在もなお、村の代表者としてその威信を継続しています。
バナ族の平穏祈り儀式 |
テイグエン地方に住む各少数民族の生活は昔から、自然に依拠した生活をしており、太陽の神、火の神、水の神、川の神など多くの神を祀る信仰があります。
神様を祀る多くの儀式を行ってよい天候や豊作、健康、平穏などを祈りますが、山々の中に住んで自然から多くの困難にさらされてきました。そのため、コミュニティの団結を強化して村人を導くような経験豊富で才能あふれる指導者が求められました。
この指導者は、若いころ勇敢な戦士、あるいは、生産活動で優れたもので、年を取ったら、村人の信頼を得て村長に選ばれます。村長の威信は強権から生じるものではなく、村人の尊敬や憧れによるものです。こうした村長は、コミュニティの団結の核心であり、村人の生活において導きの手でもあります。
テイグエン地方のほかの少数民族と同様、バナ族は村長の役割を非常に大切にしています。バナ族にとって最高の権力は昔から伝わるきまりで、村長はそのきまりの象徴です。こうした村長は村のすべてのことを決めますが、村人は村長の決定を徹底的に順守しなければなりません。テイグエン地方社会科学研究所の元所長ブイ・ヴァン・ダオ博士は次のように話しました。
(テープ)
「昔から伝わるバナ族の掟の中には村長の役割が大きいです。例えば、村人同士の間でけんかが発生した場合、村長は、和解グループを作ります。和解グループは、和解を目指しますが、これからそのようなけんかが起こらないように双方の過ちなどを明らかにします。関係両者は和解グループの決定を遵守しなければなりません。」
バナ族の平穏祈り儀式 |
バナ族の人々は昔から伝わる掟に従って日常生活の中で発生したけんかやトラブルを解決します。村長はその過程において中心的な役割を果たします。ザライ省に住むバナ族の一人ホ・ダムさんは次のように話しました。
(テープ)
「何か問題があったら、和解グループが集まって相談します。村長は、その問題について分析した上で、和解グループが出した解決策を判断します。最後の解決策を出す人は村長です。」
村長は神様ではないものの、村人の精神生活の拠り所です。夜になると、村の集会所で囲炉りの周りに座って村長と話し合う習慣があります。村長は、洪水や干ばつ、土砂崩れなど自然災害に対応する経験や、人間としてのマナーなどを教えたり伝統的な叙事詩を語ったりするなど村の生き字引としても尊重されます。
現在、村長は、昔のままの役割だけでなく、国の法律や政策の展開を村人に働きかけるという役割も果たしています。