多民族国家のベトナムには54の民族が共存しています。53の少数民族のほとんどはその衣服を見るだけで見分けることができます。その中で、北西部に居住しているハニー族は独特の衣服を着ています。その衣服を見ると、すぐハニー族だとわかります。
しかし、ハニー族であっても、黒ハニー族と華ハニー族があり、両者は衣服が違います。華は中華の華という漢字で表記されます。黒ハニー族は、ラオカイ省に居住していますが、華ハニー族は主に、ライチャウ省に住んでいます。
黒ハニー族の女性
華ハニー族の女性
黒ハニー族の女性は黒い布に青い模様をつけるのに対し、華ハニー族の女性は黒い布に赤や青や黄色など目立つ色の模様をつけます。そして、華ハニー族がよく使う模様は黒ハニー族よりさらに様々な形があります。ハノイ市内のベトナム民族学博物館の民間文化研究者ルオン・ヴァン・ティエトさんは次のように語りました。
(テープ)
「ラオカイ省の黒ハニー族の衣服と違ってライチャウ省の華ハニー族は森の花のように、派手な色の衣服を着ています。その華ハニー族の衣服を見ると、自然を衣服に取り入れたような感じがします。衣服の中でも最も多い色は赤ですが、その服には、白、黄色、青の模様が巧みに付けられるので、まるで森の花のようです。そして、華ハニー族の女性がよくかぶっているのが赤い帽子で、その帽子は複数の赤い紐で飾り付けられます。」
それに対し、黒ハニー族の女性の服は地味ですが、優雅です。黒い布にシンプルな青の模様が付けられ、それに少し白い模様が施されます。そして、黒ハニー族の女性の特徴はその髪の毛とかぶるカツラです。黒ハニー族の女性は誰もが、羊の毛でできたカツラをかぶらなければなりません。
しかし、髪の毛とカツラのかぶり方には文化的な意味があります。自分の髪の毛を右か左のどちらかをお下げにすると共に、カツラも右か左の方にかぶるのはまだ結婚していない女性です。それに対し、既婚の女性は髪の毛とカツラを真ん中にしなければなりません。そして、スカーフでかつらを覆うのが一般的です。民間文化の研究者チャン・フー・ソンさんは次のように話しています。
(テープ)
「黒ハニー族の女性がスカーフ特に藍色のスカーフで覆うのは既婚だという意味です。この民族の考えでは、頭の頂上はその人の魂が棲むところで、女性が結婚したら、スカーフで覆って魂をそのままにしなければなりません。」
黒ハニー族でも華ハニー族を問わず共通していることは女性なら誰でも、衣服は自分で作らなければなりません。その衣服を作るには普通5~6ヶ月かかります。いろいろな形をした模様を刺繍しなければならないからです。現在、段々と洋服を着る人が増えてきていますが、祭りや儀式はもちろん、その民族衣装は日常生活の中でもよく着用されています。