ベトナム北西部に居住している少数民族ハニー族は農業で生計を立てています。特に、山間部に住むこの民族は棚田での稲作が上手で、棚田用の水利施設の建設で有名です。農業のほか、藤細工や竹細工、紡績、縫製などの職業もやっています。
山々に住むハニー族は稲作にふさわしくない山を棚田に変えるのが上手です。美しい棚田そのものは、この地の観光スポットとなり、観光客の心を奪っています。山を棚田にするのは難しいですが、稲作に必要な水を棚田で確保するのはさらに難しい作業です。しかし、ハニー族は水源から田への水利施設を整えることで棚田での稲作ができるようになりました。各少数民族の文化を研究しているグエン・フン・ヴィーさんは次のように話しました。
(テープ)
「ハニー族は、棚田で稲作が上手にできる民族の一つです。特に、水資源を大切にしているので、水を大切に使えるんです。だから、ハニー族の生活にとって、棚田と水は重要な存在です。」
ハニー族は稲作とともに、畜産もやっています。そして、家畜や家禽を自然の中で生活させるのが特徴です。ハニー族の村の周辺にある森に入ると、数百頭の水牛の群れを見かけることができます。
家具を作っているハニー族のおじいさん
大自然の中に住むハニー族は森に沢山ある藤や竹を利用してカゴやお盆など家具や調度品を作っています。ハニー族の家具は自給自足であるだけでなく、周辺の民族に人気がある商品にもなっています。ハニー族はこの職業を民族の誇りとして大切にしています。子供は七、八歳になるとこの仕事を習い始めます。イティ村に住むリー・ホー・シーさんは次のように話しました。
(テープ)
「この職業を子供に教えなければなりません。子供が習って民族の伝統を守るんです。だから、どうして全ての技を子供に教えたいんです。」
ハニー族は糸つむぎ、紡績と縫製も自分のアイデンティティとして誇りにしています。女性なら、誰もが布を織りて服を作ることができます。どの家庭にも手織り機があります。ハニー族の服装はベトナムの各少数民族の伝統衣装の中で最も綺麗だと評されています。多くの観光客は、ハニー族はその暮らしぶりや文化も独特だが、なかでも目を引くのがその美しい民族衣装だとよく言っています。ハニー族がよく着ているのは藍染めの衣装ですが、素朴な雰囲気ながら、ジャケットなどに施された繊細な刺繍は芸術的ともいえるほどです。
もともと自分たちの衣服作りのために培われた高い織物技術でしたが、最近はバッグや小物など観光客向けの土産物を作る人も多いです。少数民族の人たちにとっては、土産物を売ることも立派な収入源のひとつになっているからです。ハノイから来た観光客トゥ・アインさんは次のように話しました。
(テープ)
「ハニー族の文化を探るチャンスがあって、その民族衣装の模様とかが好きになりました。布織りや染め、刺繍など彼らの服作りを直接自分の目で見ることができるのは本当に面白いです。観光客がたくさん来て彼らが作ったものを買うのはここの人たちの生活改善につながると思います。これにより、民族衣装の保存に役立つでしょう。」
日々近代化される現代生活の影響で、ハニー族の生活も変化が少なくありませんが、伝統職業や民族衣装などこの民族ならではの文化は今なお守られています。