ベトナム最北端のハーザン省に住む22の民族の一つである少数民族プペオ族は、独特の文化を誇りとして現在も多くの伝統的な文化を保っています。その中で、婚礼の儀式はその誇りの一つです。
プペオ族の男女が自由に付き合い、自分自身で結婚相手を決めるのはこの民族の昔からの習慣です。そのためか、結婚手続きは簡素ですが、特色があります。結婚は顔合わせ、結納、結婚式という3つの段階が含まれます。
プペオ族の男女
まず、男性とその家族に頼まれた媒酌人は、おこわ、酒、そして、少しのお金を持って女性の家に行き結婚を申し出ます。それらのものは赤い紙に包まれて、リボンも付けられます。ハーザン省の各民族の文化を研究するグループの一人ルー・サン・ヴァンさんは次のように語りました。
(テープ)
「媒酌人は女性の家で女性のご両親と話し、その男性がお嬢さんと結婚したいということを伝えます。もし、女性の家族が同意すれば、媒酌人におこわとお金をもらってお酒を飲みます。同意されない場合、それらのものを媒酌人に返します。」
もし、女性の家族が同意すれば、男性の家族は結納品としてお酒、おこわ、鶏、及び、長さ2メートルぐらいの赤い布を準備します。又、そのカップルの証の表しとして指輪と腕輪を用意する家族もあります。結納の後、そのカップルは正式に夫妻になりますので、結納はプペオ族の結婚において最も重要な段階です。先ほどのヴァンさんは次のように話しました。
(テープ)
「結納の日、媒酌人は、3つのおこわの包み、2本のお酒、2羽の鶏、2つの茶碗、玉の紐、そして、赤い布を持ってきます。結納品が置かれる女性の家の机はいくら長くても、玉の紐はその長さを持つべきです。そして、赤い布もその机を全部覆うのが条件です。そうして、結納を行ない、結婚式の日を決めます。」
結婚式では、花嫁と花婿はもちろん、両方の家族は伝統的な民族衣装を着ます。花嫁のお母さんは、手作りの伝統的な衣装を花嫁にあげます。プペオ族の一人チャン・ティ・マイさんは次のように話しました。
(テープ)
「娘が花婿の家に行く前、我が民族の一番美しい衣装をあげます。その衣装を見ると、どこの民族であるかすぐ分かります。これからも、若者に民族独特の文化を保って欲しいのです。」
結婚式の日、花婿の家族は奇数の人数で花嫁を迎えに行きます。帰りは花嫁が加わるので、偶数になってそれぞれ組みになります。そのわけは「一人ではない」という意味です。婚礼用品として、おこわの器が5つ用意され、それぞれの上には豚のロース部分が置かれます。又、4本の酒、2羽の鶏もあります。全ての婚礼用品は赤い紙に包まなければなりません。
花嫁の家の正門の前に、小さい台が置かれ、その上にはお酒とお茶があります。花婿の家族が来ると、両方の家族の代表は歌垣をしながら、お酒とお茶を飲んでもらいます。その後、花婿の家族は花嫁の先祖礼拝の儀式を行い、婚礼用品をあげます。
プペオ族の結婚式は花嫁の家で1日中行なわれます。翌日の朝、花嫁の友達が花嫁を負ぶって花嫁の家の門を出ます。その後、花婿の家族は花嫁を連れて帰ります。花婿の家に来てから、花婿と花嫁は先祖礼拝の儀式を行います。儀式の後、花嫁は花婿の家族の一員になり、実家の一員の資格を失います。先ほどのヴァンさんは、次のように話しました。
(テープ)
「花嫁の実家が近ければ、結婚式の3日後に、花婿の家族は花嫁を実家に連れて行き、感謝を述べます。花嫁の実家が遠ければ、結婚式の7日後に、花嫁を実家に連れて、一晩泊まります。そのとき、花嫁は実家で掃除や、食器を洗ったりすることが禁じられるというのが決まりです。」
プペオ族の結婚習慣として、他にも決まりがあります。例えば、結婚した花婿花嫁同士の兄弟姉妹は結婚してはいけないということです。現在も、これらの決まりや習慣などはきちんと守られています。