(VOVWORLD) - 伝説では、横笛ケンは、人間の団結と協調のシンボルとして生まれたものですが、今もなお、その役割を果たし続けています。
ベトナムで最も多い少数民族として知られているモン族について触れるならば、この民族の独特な楽器である横笛「ケン」をすぐ思い浮かべることでしょう。この楽器に関する伝説はこの民族性を示すもので、モン族の伝説の中で最も重要なものとみなされています。
(ケンの音)
ケンの演奏 |
竹でできた横笛「ケン」はモン族にとって神と人間をつなげるもので、とても貴重な楽器です。また、この楽器は、恋人や友達に自分の気持ちを伝えるものとして、人間同士の重要なコミュニケーション手段の一つでもあります。
そのため、ケンは団結を重視するというモン族の民族性を示すものです。それは、ケンの誕生に関する伝説でも明らかにされています。この伝説について、モン族の文化研究者タオ・ア・ゼンさんは次のように話しています。
(テープ)
「モン族の横笛「ケン」はいつ誕生したのかわかりませんが、昔から伝わる伝説によりますと、昔々7人の兄弟が両親を亡くした後、いろいろな困難やトラブルにあったため、一緒に住むことにしました。7人の兄弟の団結と協調を示すために、6本の竹からなる横笛「ケン」を誕生させました。その中の一番大きくて短い竹は一番上の子と一番下の子を、残りの5本は5人の兄弟を象徴します。この「ケン」はモン族の人々が同じ言葉をいう、同じことをするという意味です。」
6本の竹からなるモン族の横笛「ケン」は、それぞれの長さによってその音色が違いますが、一番大きくて短い竹はそのメロディーのベースをつくるという役目です。「ケン」の音色は清らかで、聞く人の心に染み込んでゆきます。
特に、若い男性にとってケンは愛する女性に自分の気持ちを伝える愛のメッセージのようなものです。ケンを吹きながら、上手に踊ることができる男性は、女性の理想的な結婚相手とされています。
しかし、横笛ケンは、恋愛感情を示す手段であるだけでなく、結婚式や葬儀、お祭りなどすべての行事にとって欠かせない存在でもあります。ケンは、嬉しい時も、悲しい時も、そして、お祝いの言葉を述べたい時も自分の気持ちを表す手段なのです。
そして、ケンの特徴は、回ったり体を動かし踊りながら、ケンを吹くということです。踊りはそのメロディーに合わせなければなりません。ケンを上手に吹くのは難しいですが、上手に踊りながら、吹くのはもっと難しいことです。
しかし、それは、男性の力を示すもので、モン族の男性は子供の頃から、ケンを習い始めます。北部タイグエン省ドンヒ県に住むベテランのケン演奏者リー・ヴァン・シンさんは次のように話しています。
(テープ)
「モン族の男性ならば、ケンが吹けることが成人になる条件です。私の場合、3年間習いましたよ。それができないと、彼女もできないですよ。私がケンを上手に吹くことによって、妻は私のことが好きになったんです。そのケンは、モン族の人々のつながりと絆を象徴するものと言えますね。」
伝説では、横笛ケンは、人間の団結と協調のシンボルとして生まれたものですが、今もなお、その役割を果たし続けています。