(VOVWORLD) - 横笛「ケン」(Khen)はモン民族の文化の一翼を担っています。
ベトナムには54の民族が共存していますが、その中でも、モン族は最も多い少数民族として知られています。主に北部山岳地帯や北中部タインホア省、中部ゲーアン省、高原地帯テイグエン地方に居住しているモン族は豊な文化を持つことでも知られています。その中で、モン族の横笛「ケン」(Khen)はこの民族の文化の一翼を担っています。
(テープ)横笛の音色
ケンの踊り |
モン族の横笛「ケン」は、6本の竹からなり、それぞれの長さによってその音色が違います。「ケン」はモン族にとって神と人間をつなげるもので、とても貴重な楽器です。また、この楽器は、恋人や友達に自分の気持ちを伝えるものとして、人間同士の重要なコミュニケーション手段の一つでもあります。こうした横笛は、モン族の多くの祭りや行事に欠かせないものですが、モン族の男性が日常生活の中でもいつもこの「ケン」を持ち歩いているほど、日常生活の用品とも言えます。
モン族の男性は13歳ぐらいから、「ケン」を、外出時の欠かせない持ち物とみなしています。嬉しい時も、悲しい時も、「ケン」を通じて自分の気持ちを表す習慣があります。そして、「ケン」を吹きながら、上手に踊りをするのは男性の力を示す方法の一つです。北西部ディエン・ビエン省トゥアチュア県に住むモン族の一人ヴ・ア・キさんは次のように話しています。
(テープ)
「ケンはいつもモン族の男性のそばにあります。祭りへ行く際にも、葬儀へ行く際にも、ケンを吹きます。ケンはモン族にとってとても重要なものです。言葉で言えない気持ちを、ケンを通じて表現できるのです。」
ケンの踊り |
モン族の横笛「ケン」の音色は清らかで、聞く人の心に染み込んでゆきます。特に、若い男性にとってケンは愛する女性に自分の気持ちを伝える愛のメッセージのようなものです。ケンを吹きながら、上手に踊ることができる男性は、女性の理想的な結婚相手とされています。
婚姻の宴で吹かれる横笛ケンの音色は、結婚生活に入る前の娘に対する両親からのセッメージでもあります。そして、葬儀で吹かれるケンの音色は、生きている人から死者へのメッセージを乗せるものです。
こうした横笛を作るのは簡単なことではありません。巧みな職人技がないと、質の高いケンに仕上がらないということです。横笛ケンの職人たちは、父親からケンの作り方を習い、また、自分の息子に教えるという代々受け継がれますが、中には自分の息子以外にも教えたがる職人もいます。その職人の一人ザン・ア・カイさんは次のように話しています。
(テープ)
「子どもの頃、父親がケンを作る様子を見て好きになって、父親に習いました。最初は難しかったですが、やっとできました。そして、作ったあと、吹き方も習いました。ケンがいつまでもなくならないように、たくさんの若者に教えたいと思います。」
モン族の代表的な楽器である横笛「ケン」は今もなお、モン族の生活にとって欠かせないものですが、今後も変わることはないでしょう。