ベトナム東北部に集中的に居住している少数民族サンチ族の村にはそれぞれの村に社が1つあります。社は、村の功労者を守護神として祀るところで、村人の精神生活で重要な役割を果たします。また、社は旧正月の2日に年に1回オープンするのが一般的です。
サンチ族の村の社は簡単な建築です。レンガ造りの社は一見すると、普通の家のように見えます。中も、漆器の家具や、像、飾り物などがなく、祭壇しかありません。しかし、社を建てるとき、サンチ族はその立地をの選ぶにあたり気をつけます。サンチ族が多数住んでいるバックザン省ルックガン県キエンラオ村のラム・ヴァン・オアンさんは次のように話しました。
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「19世紀の終わりか20世紀の初めに建てられた社は、村の中心的な場所にあります。社は何度も改造されましたが、今もそのまま、古木の下に静かに建っています。」
フート省に住むサンチ族の新米祈願儀式(写真:langviet)
サンチ族の人々にとって社は村人の精神生活において中心的な存在で、村人全員に大切にされています。キエンラオ村のリー・ホン・ヴィエンさんは次のように話しました
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「旧暦の1月2日に社で祭礼がありますが、村の家族は貧富を問わず、金銭や品物を供え物として寄付し、村全体の幸福と繁栄を守護神にお祈りします。祭礼は司会役をする人がいますが、村人は全員が力を合わせて催します。祭礼で、村の問題事について話し合います。」
社は旧暦の1月2日にしか開けしないのが一般的ですが、村の緊急事があれば、開かれます。先ほどのオアンさんは次のように話しました。
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「村に緊急事が発生したら、社に集まって話し合い、村人が豊かで穏やかな生活を送れるように守護神に祈る祭礼を催します。たとえば、かつては疫病があったときに、そういう祭礼を行ったことがあります。この祭礼は、科学技術がまだ進んでいないときに行われたものですが、コミュニティの結束につながったと思います。」
サンチ族の社は建築でも室内装飾でも簡素ですが、村の神聖なところでタブーがあります。たとえば、親族が亡くなった遺族の人たちはその年に、社に行ってはいけません。キエンラオ村のリー・ティ・ナムさんは次のように話しました。
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「社に持っていく供え物はお酒やお餅、お肉などです。供え物は新鮮で、作りたたての物でなければなりません。また、供え物を持っていく人は男性に限ります。その男性も清潔で、服装などをきれいに着なければなりません。そうしないと、罰金を科せられます。昔からはこのように厳粛にされています。」
先ほどのラム・ヴァン・オアンさんによりますと、供え物を作るのは男性であるのが一般的です。また、心をこめて供え物を作らなければなりません。オアンの話です。
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「私はよく供え物を作っています。父親に作り方を習ったとおりに、作っています。私の考えでは、この決りは、お正月に女性たちを解放して休みを取らせると共に、男性も家事をやらなければならないという意味です。」
生活が現代化される中にあっても、社に関する決りごとは今もなお保たれています。また、社はサンチ族の人々にとって精神的な支えであり続けています。