「月の母」とも呼ばれるナンハイ(Nang Hai)という祭りは北部山岳地帯カオバン省に住むティ族の伝統的な祭りであり、生殖神崇拝の習慣を表しています。この祭りは住民の日常生活と労働生産から生み出されたものです。
この祭りは旧暦1月から3月中旬にかけて行なわれます。ティ族の信仰によりますと月には母親と妖精になる12人の娘が宿り、この地での豊作の保護にあたるとされています。ナンハイ祭りはこの地の女性たちが天に向かい、月の母と妖精たちの地球への訪問を迎える儀式です。祭りは3つの儀式から構成されます。儀式を行なう前に、住民たちはお供えを用意したり、高床式の家での祭壇や土地の神様である土地神を祀る廟を飾ったりしなければなりません。また、住居の前に、ナンハイを迎える小屋を建て、花や草で飾り付けます。ティ族出身のリュ・ティ・マイ・リエンさんは次のように語りました。
(テープ)
「土地神に調理されていない豚をはじめ、鶏やおこわを奉納します。かつて、儀式は1ヶ月もかかりましたが、今は3日間に短縮されました。それぞれの家はおこわを茶碗に盛り、供出します。」
祈祷師、礼拝文を読み上げる
祈祷師は赤い長い羽織りを身に着け、赤い帽子を被り、祭壇の前に儀礼を行ないながら、ティ語で祈ります。祈祷師の両側にはナンハイを象徴する2人の若い女性が座ります。その後ろに12人の若い女性が藍色のシャツを着て、2列に並びます。また、高齢の女性は14人の若い女性にナンハイを迎える儀礼の実施を指導します。ティ族の観念によって、この人は幸福な家族に恵まれ、ティ族の風習に明るく、歌が上手な人でなければならないとしています。
儀式の幕開けに祈祷師は礼拝文を読み上げた後、座っている2人の若い女性は歌を歌います。これはナンハイを天からこの地に招待する儀礼です。民間文化研究院のグエン・ティ・イエン博士は次のように説明しました。
(テープ)
「ナンハイ祭りはレンドン(Len dong)儀式、つまり神を具現する儀式に似ています。12人の若い女性は12の妖精の化身で、歌を歌いながら、人間のために長寿、幸運、幸福、豊作などを祈願します。村人全員がこの儀式に参加しますよ。」
儀式後、祈祷師は14人の若い女性を土地神の廟に連れて行き、月の母を迎える儀式を行ないます。続いて、ナンハイを迎える小屋に向かい、礼拝を行なった後、歌を歌います。
小屋で歌う
一方、豊作や幸福を祈る儀式が終わってから「月の母」の12人の娘たちは小屋を取り外し、村人と別れます。祈祷師、高齢の女性、村人たちは歌を歌いながら、川の方へ歩いてゆきます。
川の方へ行く
かつて、ティ族の農業生産は自然によるところが大きかったことから、住民たちはいつも順調な天候や豊作、幸福な家族を希望しています。ナンハイという祭りは超能力を持つ神秘的な姿勢の加護への信頼を示し、独特な演芸を披露するものです。