写真: Ngoc Thang
食糧安全保障の確保は政府の第一の関心事となっています。また、工業の発展と都市開発に伴う農地の縮小や気候変動が複雑に推移し、農業生産にマイナス影響を与えている現在、食糧安全保障は重要さを増しています。食糧安全保障を確保しながらも、どのようにして農業生産高を向上させ、コメの輸出量を増加させるかは大きな課題となっています。
農業分野でのドイモイ=刷新事業が開始されてから30年近く経った現在、ベトナムはかつて食糧不足に喘いだ国からコメ輸出では1、2位を争う世界のコメ輸出大国へと成長しました。この数十年間、コメはベトナムの主力の輸出品目に入っています。1990年から2010年期に、コメの輸出量は年平均400百万トンに達し、その輸出額は農産物の各輸出品目の中でトップの座についています。この数年、世界金融危機の影響を受け、ベトナム経済は停滞しているものの、農産物の輸出は困難の克服を支えるものとなっています。農業専門家のボー・トン・スアン教授は次のように語りました。
(テープ)
「1989年からコメを輸出し始め、食糧不足国からコメ輸出国にシフトしました。これは収穫高が高い新品種の開発や科学技術研究に対する国家の融資、水利設備の充実などによって収められた成果です。党と国家は農民に対し、生産に励むよう奨励してきました。これにより、農民は富を手にした上で、輸出にも貢献してきました。」
それ以来、ベトナムは食糧に対する国内需要を満たすだけでなく、コメの輸出高も増加しています。2012年、コメの輸出額は810万トンに達し、額にして37億ドルとなりました。ただ、輸出高は高いものの、コメの質がタイやインド産に劣っているという状態です。こうした事情を踏まえ、国会と政府は生産能力、品質の向上と持続的な食糧安全保障の確保に向けた農業再構築にする決議を下しました。これに基づき、土地使用の効果向上、科学技術研究への投資強化、コメの質の向上を目指す新品種の開発、輸出用農産物の競争力の向上などといった措置が挙げられました。他方、都市開発に伴う農地の縮小や気候変動が悩んでいる問題となっています。長期的な食糧安全保障と輸出を確保するためには農地を厳格に管理し、コメ栽培地を計画的にしなければなりません。また、この計画は食糧への需要や気候変動状況を基礎に作成される必要があるとしています。南部メコンデルタ地域の経済専門家グエン・バン・ガイ博士は次のような見解を述べています。
(テープ)
「コメ栽培地を他の農産物の栽培や水産物の養殖、また、都市開発に活用し続ければ、必ずやコメ栽培地の面積が減少の一途を辿ります。これを克服するため、一定の栽培面積あたりのコメの収穫高を向上させるとともに気候変動による影響を最小限に抑えるよう、頭を絞らなければなりません。」
さきごろ、政府は2020年までの食糧安全保障の確保計画を作成しました。これによりますと、これから2020年まで、及び2020年以降、コメ生産高を年平均4100万トンから4300万トンにするため、コメ栽培地を380万ヘクタールに維持し、国内の需要を満たすと同時に輸出量を年平均、およそ400万トンにするという目標が設定されました。
食糧安全保障の確保は持続的な経済発展を支える柱の一つであり、農民の収入と生活水準の向上に寄与するとみられます。