旧正月テトにバインチュンを無料で提供するボランティア運動

山崎  こんにちは、山崎千佳子です。 

ソン  こんにちは、ソンです。いよいよ今週の土曜日、28日が今年のベトナムの旧正月のテトの元日です。

山崎 ベトナム中が浮き立っている感じがします(笑)。

ソン そうですね。でも、そんな中、貧しい人達も楽しいテトを過ごせるようにというボランティア活動も盛んなんです。

山崎 日本で言うと、年末助け合い運動のようなものでしょうか?どんなボランティアですか?

ソン テトには欠かせない食べ物、バインチュンを無料で提供する活動が、ベトナム全国各地に広がっています。今日のハノイ便りは、これについてお伝えします。

旧正月テトにバインチュンを無料で提供するボランティア運動 - ảnh 1
ベトナムのおせち料理バインチュン

山崎 この前のおしゃべりタイムでも、バインチュンについてお話しましたね。ベトナムのおせち料理と言えますね。

ソン はい。普段でも食べるものですが、テトには欠かせません。ベトナム人は、米を「天からの宝」と考えます。その中でも一番重要なのは、もち米です。

山崎 なぜ、もち米が一番大事なんでしょう?

ソン 米の中で栽培が難しくて、収穫量も少ないからです。

山崎 と言うと、値段も高くなるんですね。

ソン そうなんです。だから、どの地方でも神様と先祖への供え物の中には、もち米でできた食べ物があります。その代表的な食べ物のひとつがバインチュンです。

山崎 なるほど。そうやって1つ1つ聞いていくと、物事には全て理由があるというのがわかりますね。

ソン そうですね。バインチュンの「バイン」は、米や小麦などの粉で作った餅や煎餅、ケーキ、お菓子などの総称で、チュンは「蒸す」という意味です。

旧正月テトにバインチュンを無料で提供するボランティア運動 - ảnh 2
葉を外したバインチュン

山崎 日本人にわかりやすく言うと、バインチュンは「ちまき」ですね。でも、日本のちまきとは大分違います。

ソン はい。15センチから20センチぐらいの正方形の形で、もち米の中に緑豆の餡と豚肉が入っています。これをラーゾンというバナナの葉に似ている緑の葉っぱで巻いて、12時間ぐらい茹でます。ちなみに、ベトナム北部では四角い形ですが、南部のものは直径10センチぐらいの円柱型で、長さは40センチぐらいになります。

山崎 これも北部と南部で違うんですよね。日本のおせち料理はそれぞれの食べ物に意味がありますが、バインチュンも何かありますか?

ソン はい。四角は大地を、もち米と緑豆はすべての穀物を、豚肉はすべての動物、ラーゾンの葉っぱはすべての植物を表していると言われます。

山崎 身の回りの物全てが入っているんですね。壮大な感じですね。

ソン そうですね。でも、それだけではないんです。バインチュンの白いもち米は金、緑豆をついてできた黄色の餡は土、豚肉は火、バインチュンを包む緑の葉っぱは木を象徴しています。バインチュンを茹でた後のお湯は黒くなるので、これは水の象徴です。

山崎 その色と意味は、古代中国の五行説ですね。バインチュンも五行説だったんですね。深いです。

 ソン はい。バインチュンには伝説もあるんですよ。

山崎 ただのちまきじゃないんですね。どんな伝説ですか?

ソン ベトナムの最初の国家とされるバンランという国の第6代フン王には、20人の息子がいました。王は跡継ぎを選ぶために、息子達に世界中から珍しくて美味しい食べ物を探すよう命じました。王子たちは遠い所まで食べ物を探しに行きましたが、18 番目の王子だけは、夢に見た神様のお告げ通り、大地を表す四角いバインチュンと、天を表す丸いバインザイーを作って、王に捧げたんです。

山崎 バインザイーは何ですか?

ソン ベトナムソーセージを挟んだ餅です。王は大変喜んで、その王子を後継者としました。そして、毎年12月に一年の感謝をこめてバインチュンを作るよう命じ、それから正月に各家庭でバインチュンを作る習慣が始まったそうです。

山崎 これも深い話ですね。バインチュンあなどれませんね(笑)。

ソン そうですね。でも現在では、それぞれの家で作るよりも、市場で買うか、店に注文して買う人が多いです。

山崎 これも日本のおせち料理と同じですね。作るより買う人が増えています。

ソン そうかもしれませんね。テトの時期は寒いですから、昔はバインチュンを茹でている間に、鍋の周りでいろいろ話したり、イモやトウモロコシを焼いて食べたりしました。あの楽しい雰囲気は忘れられませんね。

山崎 古き良き時代ですね。ボランティア活動で恵まれない人達にバインチュンを贈る場合にも、市場などで買うんですか?

ソン いえ、ボランティアの人達が集まって作っています。例えば、今月7日から25日まで、ホーチミン市学生協会の主催で、「ボランティアの春」という活動が行われています。この運動が行われるのは今年で9回目なんですが、バインチュンは手作りです。

旧正月テトにバインチュンを無料で提供するボランティア運動 - ảnh 3
バインチュンをつくっている

山崎 心がこもっていますね。どれくらいの人たちが参加しているんですか?

ソン ホーチミン市の大学、短大、専門学校、高校、合わせて52校の学生3万7千人が参加しています。

山崎 かなり大規模ですね。

ソン はい。この活動は、貧困層の人達がテトを楽しく過ごせるようにというのが狙いで、献血やイベント、身寄りのない高齢者のケア、家の掃除など様々なことを行っています。中でも目玉は、1000個のバインチュンを作って、貧しい人に贈るという活動です。参加しているボランティアの話です。

(テープ)

「今回が初めての参加ですが、本当に意義深い活動だと思います。経済的に苦しい人達のためですが、私のような若者が他の人の苦しみを理解できる機会でもあります。また、バインチュンを自分で作れるようになったのもうれしいです。」

ソン 今月17日から19日までは、ハノイ郊外にあるベトナム民族文化観光村で、「バインチュンを作って、恵まれない人達に楽しいテトを」というイベントも行われました。2回目の開催になります。

山崎 定例化していくといいですね。こちらの参加者はどれくらいですか?

ソン 数百人の仏教徒や若者たちが、2000個のバインチュンを作って、洪水や台風に襲われた4つの省の被災者に贈りました。

山崎 イベントが行われたベトナム民族文化観光村管理委員会、副委員長(ラム・ヴァン・カン)の話です。

(テープ)

「このイベントを通して、テトにバインチュンを作るというベトナムの伝統的な習慣を守る意識を若者たちに伝えられたらと思います。伝統文化の保存にもつながりますし、社会全体に、貧困層への支援運動に積極的に参加するよう呼びかけたいのです。」

山崎 2000個のバインチュンだと、材料もかなり多くなりますね。

ソン そうです。もち米は200キロ、緑豆は50キロ、豚肉は30キロぐらいです。

山崎 すごいですね。こういった活動は社会の注目を集めるんじゃないですか?

ソン はい。テト前にはいろいろなボランティア活動が行われますが、ここ数年は、バインチュンを作って貧しい人に贈るという活動が、一番有名になっています。

山崎 やはり、ベトナム人だったらテトは幸せに過ごしたいとみんな思うでしょうから、共感も得られるでしょうね。

ソン はい。社会的効果も大きいと評価されています。

山崎 バインチュンは、社会のつながりと伝統文化の保存に役立っているんですね。ただのちまき、ではありませんでした。では、おしまいに一曲お送りしましょう。「~」です。

(曲)

「~」をお送りしました。

今日のハノイ便りは、ベトナムの旧正月、テトの時期に、恵まれない人達にバインチュンを贈るボランティア活動についてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。


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