イラン核問題協議(写真:politico)
イランの核開発問題の解決を目指して協議を続けてきた欧米など関係6か国とイランは日本時間の14日夜、最終合意に達したことを正式に発表しました。今回の合意でイランの核開発は大幅に制限されることになり、紛争の絶えない中東地域で核の拡散を防ぐ大きな一歩となります。
合意の内容に基づき、イランの核開発は15年間にわたって大幅に制限されます。このうち、ウラン濃縮に使われる遠心分離機は今後10年間にわたって、現在のおよそ1万9000基 の3分の1以下にあたる6100基余りに減らすとしています。その一方で、ウラン濃縮の能力拡大につながる新型の遠心分離機の研究・開発について、一定の 制限はあるものの、継続が認められています。
イラン核合意:米政権、外交成果アピール
イラン核問題を巡る同国と6カ国による包括合意を受け、交渉を主導したアメリカのオバマ政権は「敵との対話」による関与外交の成果をアピールしました。 2009年に就任したオバマ氏はイランを「悪の枢軸」と位置づけたブッシュ前政権の方針を転換させました。「直接対話」の姿勢を打ち出す一方、対イラン制裁の実施や、イランの地下核施設を爆 撃できる大型貫通爆弾の改良開発などで硬軟両様の構えをとってきました。
一方、アメリカのケリー国務長官は、アメリカのCNNで「制裁がイランを交渉のテーブルにつかせた」と指摘しました。制裁による圧力で交渉に引き込む「オバマ外交」の成果を強調しました。
イラン核協議合意 世界のエネルギー供給に影響
今回の最終合意は、中東地域の安全保障や日本をはじめ世界の経済を支えるエネルギー供給にも大きな影響を与えるものとみられています。経済制裁が解除されることによって世界屈指の豊富な埋蔵量を誇るイランの原油や天然ガスの輸出が大幅に拡大され、欧州諸国にとってはウクライナ情勢を巡って関係が悪化しているロシアに対する天然ガスの依存を減らす好機となります。そして、世界の企業にとって人口が7800万に上るイランの巨大市場に進出するチャンスが大きく広がることになります。
イラン 中東の勢力図への影響に注目
イランの核開発問題の解決に向けた最終合意に達したことを受け、中東各国の間では過激派組織ISに対抗するイランの役割に期待が高まる一方で、イランが国際的な孤立から脱して存在感を高 めることへの警戒感もあり、今後中東の勢力図にどのような影響を及ぼすか注目されています。このうち、イランの隣国イラクはISとの戦いで、アメリカとイランの両方から軍事的な支援を受けています。今回の合意について、イラクのジャファリ外相は 記者会見で「我々はこの問題の解決を国際社会に訴えてきた。地域の安定のため、合意が実行されなければならない」と述べて、IS対策のために、アメリ カとイランの協力関係が進むことに期待を示しました。