ギリシャとトルコの難民合意に期待できるか


ヨーロッパに大量の移民や難民が押し寄せている問題で、4日、ギリシャに不法に入国した難民らのトルコへの送還が始まりました。初日は、パキスタンなど、シリア以外の場所から来た人たちが送り返されましたが、実効性は疑問視されています。

EU=欧州連合とトルコは、中東などからヨーロッパに渡ってくる難民や移民の流入を抑えるため、先月20日以降にギリシャに到着した人たちをトルコに送り返す代わりに、トルコにいるシリア難民のうち7万2000人をEU各国で受け入れることなどで合意しました。

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難民を乗せた船舶がトルコのディキリ港に寄港
(写真:AFP/VNA)

受け入れ開始

4日はギリシャのレスボス島からパキスタン、バングラデシュ、モロッコ国籍の男性131人をトルコ西部の港町ディキリに送還しました。他の島と合わせ同日にトルコに送られる移民は約500人に上るということです。

EUの行政執行機関である欧州委員会は同日の定例記者会見で、シリア人がトルコに送還された場合、同人数のシリア人をEUが受け入れるという合意に基づき、計43人のシリア難民をドイツとフィンランドに受け入れることを決めたと発表しました。

EUの欧州委員会によりますと、ドイツには4日分として32人のシリア難民の受け入れが割り当てられました。ドイツ内務省の報道官は4日朝に3家族16人のシリア難民が北部ハノーバーの空港に到着したことを明らかにしました。DPA通信によりますと、4日中に32人の入国が完了しました。ドイツ政府は全体で1600人を入国させる方針です。

難民・移民問題解決に疑問

今回の送還は難民と移民の区別をあいまいにしたまま着手されました。「保護すべき難民」の基準はその時々の国際情勢や世論に左右されてきたのが実態で、「移民」との明確な線引きは難しいことです。国連には今回の送還で、難民の権利が十分尊重されないことへの懸念が強くなっています。

難民とは「人種や宗教、政治的意見を理由に迫害される恐れがあり、他国に逃れた人々」を指します。一方、移民は一般的に「就労や、より良い生活の実現を目的とした国外移住者」と一般に理解されています。中東やアフリカから欧州へ相次ぎ流入した人たちをはっきり選別することは、これまでも事実上不可能でした。EUの交渉でも「難民か移民か」の定義をめぐる議論は、加盟国間で常に論争となり、迅速な合意の妨げになってきました。

今回の措置により、未曽有の大量流入に直面した欧州の難民対策は転換点を迎えました。しかし、密航の流れは止まりません。ギリシャのメディアによりますと、この日も送還船の出航直前までの24時間で、送還された人数を上回る計339人が密航船でギリシャ側に到着したということです。

EUとトルコは、今回の措置によって、密航する難民や移民を送り返す姿勢を示すことで、ヨーロッパへの流入をくい止めたい考えですが、密航してヨーロッパを目指す動きに歯止めはかかっていません。


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