イラン核合意の決裂危機

(VOVWORLD) -イランが核合意で定められた履行義務を次々と停止し、合意は崩壊の危機にあります。

妥協と苦心の末にまとまった合意を「最悪の取引」と酷評するアメリカのトランプ政権がほごにしたことがきっかけです。

7日、イランは、国内に貯蔵する低濃縮ウランを2015年に主要6カ国と結んだ核合意で定める濃縮度3・67%を超えて、当面は5%前後まで濃縮すると発表しました。1日には低濃縮ウラン貯蔵量の上限300キロ超えも認めており、合意違反がさらに拡大することになりました。イランのアラグチ外務次官は、合意維持を目指す欧州側から支援を引き出すため、交渉を続ける意思を示す一方、欧州側の支援が不十分な場合、60日ごとに新たな履行停止措置を取ると警告した。

アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、中国、ロシアの6カ国とイランが、イランの核開発制限のため2015年に結びました。イランがウラン濃縮に使う遠心分離機の削減や国際的な査察などを受け入れる見返りに、欧米は経済制裁を解除しました。「核不拡散体制を強化し、中東の安定にも寄与する」と国際社会から高く評価されました。

核合意をまとめたオバマ前政権の業績を否定したいトランプ大統領は就任前から、弾道ミサイル開発などへの規制がないと合意を批判してきました。18年5月に一方的に離脱すると、対イラン制裁も復活させ、「最大限の圧力」をかけていました。イランを敵視するイスラエルやサウジアラビアなど、トランプ政権と親密な国々の要請もあるようです。

アメリカに対抗して、今年5月に合意内容を一部履行しないと表明しました。定められていた低濃縮ウランの貯蔵量は上限を突破しました。今後はウランの濃縮度も引き上げます。それに、核合意で決まった「重水炉」と呼ばれる原子炉の設計変更も取りやめると警告しています。合意前の設計に戻せば、重水炉から核兵器の材料となるプルトニウムが取り出しやすくなるので、批判を浴びそうです。

イランは「制裁を解除しない限り、アメリカとは対話しない」「イランだけ一方的に合意を守ることはできない」という立場です。制裁で疲弊する経済を助けてほしいと欧州各国に訴えていますが、欧州もアメリカの意向を受けて苦慮しています。このまま進展がなければ、イランが「合意違反」を続けて修復不可能になる恐れがあります。

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