先週一週間の主な国際ニュースをまとめてお伝えします。
*財政危機に陥っているギリシャのチプラス首相は10日夜、ドイツのメルケル首相及びフランスのオランド大統領とブリュッセルで会談し、ギリシャ向け金融支援再開の条件を協議しました。3者は交渉を加速することで一致したものの目立った進展はなく、打開策の合意には至りませんでした。会談の結果を受け、EU欧州連合のトゥスク大統領は11日、ギリシャへの金融支援の継続を巡る交渉について「ギャンブルをしている余裕はない。誰かがゲームセットを告げる日が近づいている」と時間切れへの懸念を示しました。一方、ギリシャのバルファキス財務相は13日、金融支援を受ける条件である財政改革案をめぐるEUとの交渉で「ギリシャに譲歩する余地はない」と主張し、強硬姿勢を示しEU側をけん制しました。ギリシャはIMF=国際通貨基金から借りたおよそ2200億円の返済期限が今月末に迫り、財政破たんがいよいよ現実味を帯びています。
*過激派組織IS=イスラム国家がイラク第2の都市モスルを制圧してから、10日で1年となりました。一時は守りに回ったISは再び攻勢を強めて支配地域を広げ、イラク政府が目指すモスル奪還は遠のきました。ISはモスル全体を制圧した後、首都バグダッドに向けて一気に南へ勢力を広げていきました。6月29日にはイラクとシリアにまたがるイスラム国家の樹立を一方的に宣言しました。ISは、日本の本州ほどの広さを支配し、およそ700万人を影響下に置くほど勢力を拡大する一方、多くの住民を殺害するなど恐怖による支配を続けています。こうした事態を受けて、アメリカは2014年9月、イラクでの空爆を開始し、欧米や中東各国などと有志連合を結成して、イラクとシリアにあるISの拠点を爆撃していきます。イラクの政府軍やアメリカの有志連合はISに対する軍事作戦を強化していますが、戦況は一進一退が続いています。アメリカのオバマ大統領は450人のアメリカ兵をイラクに追加派兵しましたが、「戦いは、イラク主導の作戦だ」と述べ、イラクが主導する軍事作戦への支援を続ける考えを強調しました。
*重い肺炎などを引き起こすMERSコロナウイルスの感染が拡大する韓国では、第2の都市・釜山で初めて死者が出るなど、これまでに死亡した人は16人に増えました。感染者150人の内訳は、病院の患者が70人、家族や見舞客が54人、医師や看護師ら病院関係者が26人となっています。隔離対象者は15日時点で5200人を超え、事態終息の兆しはありません。これまでに3000近い学校が閉鎖されました。多くの学校は15日に授業を再開しましたが、少なくとも440校が閉鎖措置を続けています。
*アメリカ下院は今週前半にも、環太平洋経済連携協定(TPP)妥結の前提となる大統領貿易促進権限(TPA)法案の関連法案を再採決しますが、12日の本会議で賛成219票、反対211票でTPA法案を可決しました。しかし、TPA法案の成立に必要な関連法案が、反対が大きく上回って否決されました。与党・民主党内で反対論は根強く、再採決で可決できるかは微妙な情勢です。TPP交渉が大幅に遅れるおそれが出てきました。
*ベトナム東部海域いわゆる南シナ海で中国が進めている埋め立て作業は国際社会から強い反発を受けています。1982年の国連海洋法条約の締約国による第25回会議で、締約国は一斉に、同条約を始めとする国際法に沿って海上の平和、安定、海上安全保障、航行と航空の自由を守ることの重要性を確認しました。一方、アメリカのカーター国防長官は11日、訪米している中国軍制服組トップの范長竜・中央軍事委員会副主席と会談し、南シナ海のチュオンサ群島(英語名:スプラトリー)で中国などが進めている岩礁の埋め立てについて「永続的な中止」を実行するよう要求しました。