定例記者会見の光景= Sputnik
(日本経済新聞) ロシアのプーチン大統領は23日、モスクワで年に1度の定例記者会見を開きました。ウクライナ問題やシリア内戦を巡って関係が悪化したアメリカについて「新大統領と実務的で建設的な関係を望む」と述べ、来月発足するトランプ次期政権との対話に期待感を表明しました。核戦力を含む軍備の近代化を進める一方、冷戦時のようなアメリカとの軍拡競争は避けたい考えも示しました。
プーチン氏の会見には1千人を超える記者が出席しました。国家元首としては異例の4時間にも及び、内政から経済、国際問題まで幅広い質問に答えました。
米大統領選でトランプ氏を勝たせるため、ロシアがサイバー攻撃を通じて支援したとの疑惑に関して「オバマ現政権や民主党が彼らのすべての失敗を外的要因で説明しようとしている」と否定し、「敗者は自らを省みるべきだ」と批判しました。
トランプ氏の当選は「ロシア以外は誰も(可能性を)信じようとはしなかった」と歓迎姿勢をにじませました。同氏が米国の核戦力強化に言及したことには「目新しさはない」と指摘しています。ロシアの国防予算削減の必要性に触れたうえで、米軍が世界最強であることは「争う気はない」と述べました。
一連の発言はトランプ氏に関係改善を呼び掛ける意図とみられます。欧米がウクライナ問題を巡る対ロ制裁の解除に踏み切れば「我々も喜んで(対抗制裁を)解除する用意がある」と語りました。
ロシアが軍事介入したシリア内戦で、反体制派の拠点だった北部のアレッポをアサド政権軍が制圧したことは「ロシア抜きでは不可能だった」と自賛しました。「シリア全土の停戦が必要だ」と述べたうえでロシア、イラン、トルコの3カ国が主導する和平協議を早期に始めたい考えを示しました。
ロシア経済は主要輸出品の原油の価格低迷で不振が続いてきました。石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど非加盟国が今月、協調減産に合意し、足元の価格は1バレル50ドル台に回復しています。プーチン氏は今後の油価見通しを「来年後半に現在の水準で安定する」としたうえで、協調減産しても「我々の生産水準は(すでに)高く、大きな影響はない」と述べました。
2018年に予定する次期大統領選の前倒し観測については「可能だが必要ない」と否定しました。自身の出馬の可能性は「時期がくれば我々が何をなし遂げましたか、我々が何をできるかなどに基づいて決断する」と明言を避けました。