(VOVWORLD) - ベトナム中部高原地帯テイグエン地方にあるコントゥム省は、25の少数民族が居住している地方で、少数民族の豊かな文化で知られています。近年、この省は、少数民族の伝統文化の保存と開発に力を入れています。
ラオスとカンボジアの2か国に国境を接しているコントゥム省の面積は約9700平方キロメートルで、その人口は56万人です。その中で、ソダン族や、バナ族、ジェチェン族、ザライ族などの少数民族が人口の約半分を占めています。これらの民族は銅鑼演奏や叙事詩などの豊かな文化を誇っていますが、この文化は現代生活の中に埋没し、消滅する恐れがあります。
トゥモロン県の寄宿学校の生徒による銅鑼グループ |
そのため、コントゥム省は、各少数民族の伝統文化の保存と開発を重点的な任務と見なしており、様々な伝統文化保存開発プロジェクトを展開しています。その中で、無形文化遺産統計プロジェクトや、2016年から2020年までの銅鑼文化の空間保存・開発プロジェクト、各少数民族の伝統産業の保存と観光商品化プロジェクト、叙事詩と伝統的な祭りの復活プロジェクトなどが効果的に展開されています。これにより、少数民族の伝統文化に関する活動は村々で頻繁に行われるようになり、住民の生活は伝統文化と密接です。コントゥム省コンプロン県マンカイン村コンチェン集落に暮らす職人ア・ヌオンさんは次のように話しました
(テープ)
「コントゥム省の少数民族の伝統文化が保たれていて大変うれしく思っています。微力ながら我が民族の伝統文化の保存と開発に貢献していることを誇りに思っています」
コントゥム省の伝統文化保存開発事業で、最も成功している取り組みの例は、銅鑼の演奏や、ソアンという伝統的な踊りを学校の課外活動に取り入れたことです。2005年にユネスコによって世界の無形文化遺産として認定された銅鑼の演奏はテイグエン地方の最も重要な文化です。コントゥム省を含むテイグエン地方に暮らす各少数民族にとって銅鑼は神聖なものです。専門家の話では、いつからという時期は特定できないものの、3500年前から4000年前に生まれたという説があります。昔からこの地の人々の生活に根差してきた銅鑼の音は、人の心や思いを表しています。人間の悲しみ、喜び、怒り、期待などを表現したり、この地域の歴史を物語るものであったりします。また、新しい命を迎える儀式や亡くなった人を神の世界へ送る儀式をはじめ、さまざまな冠婚葬祭に銅鑼がよく使われています。人間と神との橋渡しとして、銅鑼を通じて二者が感情や意思を交わすことができると信じられています。
(テープ)銅鑼の音
お聴きいただいているのは、トゥモロン県の少数民族の子どもを対象とする寄宿学校の生徒が銅鑼を練習している音です。コントゥム省は、子どもが伝統文化を理解して愛することが伝統文化の保存において最も効果的方法あるとして、銅鑼の演奏者や伝統的な踊り「ソアン」の踊り手に依頼して省内の全学校で週2回、子どもたちに教えています。これにより、銅鑼の演奏と「ソアン」に興味を持つ子どもが増えています。トゥモロン県の寄宿学校の生徒の話です。
(テープ)
「銅鑼の演奏者と「ソアン」の踊り手の指導を受けた後、夜間に寮で練習しています。週3回の練習です。銅鑼の演奏と踊り「ソアン」ができてうれしく思います」
トゥモロン県の寄宿学校はベテラン演奏者や踊り手に頼んで生徒に教えるとともに、地元の銅鑼演奏コンクールや祭りなどへの参加を生徒に奨励しています。同校のバン・チョン・リュー校長は、ベテラン演奏者などの積極的な協力により、生徒たちの多くが銅鑼演奏などに興味をもったと述べ、次のように語りました。
(テープ)
「ベテラン演奏者や踊り手の指導は高い効果があります。彼らは我が民族の伝統文化を次世代に伝えたいという思いで熱心に教えてくれています。現在、当校では銅鑼演奏や踊りは主な課外活動となっており、地元の銅鑼演奏コンクールや祭りなどに参加する生徒も多くなっています」
少数民族の伝統衣装のショー |
コントゥム省の行政府と住民の努力により、少数民族の伝統文化の保存と開発事業は大きな成果を収めています。これまで、同省は2500個以上の古い銅鑼セット、および銅鑼演奏用の数百の曲を収集・保存したほか、数百の銅鑼演奏教室を開いています。また、数百軒もの村の伝統的な集会所や、16の伝統的な祭りを復元することができました。そして、最も大きな成果としては、伝統文化の保存と開発に対する住民の認識が高まっており、その波及効果が大きいということです。トゥモロン県ダクナ村モバン集落に暮らすア・ウオンさんは次のように語りました。
(テープ)
「我が民族の独自の伝統文化を身につけて、子どもたちに伝えたいと思います。我が民族の伝統文化が永遠に存在するように」
コントゥム省は少数民族の伝統文化を観光開発に活用し、コミュニティベースドツーリズムや伝統文化体験ツアーなどを促進しています。同省の文化スポーツ観光局のファン・バン・ホアン副局長は、少数民族の豊かな文化を体験したいと思ってコントゥム省を訪れる観光客が多く、その数は2022年に110万人にのぼったと述べ、次のように語りました。
(テープ)
「ベテラン演奏者や踊り手は誰もが、我が民族の伝統文化を次世代に伝えたいという願いとともに、子どもたちに熱心に教えてくれています。少数民族の伝統文化の保存・開発を図るために、伝統文化を観光客に紹介しています。観光の開発は伝統文化の保存・開発に大きな弾みをつけているからです」
コントゥム省は、伝統文化を保存・開発で模範となっており、その知見を各地に共有しています。