(VOVWORLD) -先ごろ、バクニン省人民委員会は同省の有名な民間木版画である「ドンホー」をユネスコの緊急保護無形文化遺産リストに登録するため、申請書を完成しました。
ドンホー木版画は、バクニン省トゥアンタイン県ドンホー村の村人の伝統職業であり、礼拝と祝福用の絵のほか、歴史上の人物、昔話、人間の生活などをテーマにしていますが、現在、この版画制作の職人と版画を楽しみたい人がとても少なくなっていることから、消滅の危機に直面しています。そのため、今回ユネスコの緊急保護無形文化遺産リストに登録することはこの版画の保護を強化することが狙いです。
ドンホー版画 『ネズミの嫁入り』 |
ドンホー版画は、ハノイから東へ35キロのところ、バクニン省ドンホー村の伝統的民芸の版画です。ドンホー版画は16世紀頃から生まれたといわれています。ドンホー版画は、元々お正月を彩る版画として飾られてきました。ベトナムの生活、風物詩、教訓、風刺などが描かれ、ベトナム語を表記するために漢字を応用して作られた文字、チュノムで書かれた文字が添えられた版画もあります。
ドンホー版画独特の価値はその木版と色彩、及び、版画のモチーフにあります。ドンホー版画は18のテーマがあります。また、ドンホー版画を通じて、日常生活の教訓や道徳を教えます。ドンホー版画の有名な職人であるグェン・ダン・チエさんは次のように語りました。
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「例えば、『ネズミの嫁入り』という版画は非難の意味もあればユーモアも込められています。これはドンホー版画の最も有名な作品と言えるでしょう」
ドンホー版画の価値は構図やテーマに特別な価値があるだけでなく、色彩と材料にも独特なものです。先ほどのドンホー版画の有名な職人であるグェン・ダン・チエさんはさらに次のように語りました。
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「ドンホー版画が独特なのは色合いから紙まで含めて、すべてが天然素材です。版画に使われる紙は「ゾー」という木の皮から作られています。朱色を出すため、レンガを磨きます。黒色を作り出すには、竹の葉を燃やします。黄色はエンジュの花の蕾から作られます。すべてが天然素材です。」
ドンホー版画の最盛期は19世紀末から1940年代までのことです。当時、ドンホー村にあるすべての家庭が版画を制作していましたが、現在、その数は2世帯しかありません。その中の一つはグェン・ダン・チエ職人の一家です。
チェさんの一家はドンホー版画の維持、保存センターを設立すると共に、版画の制作工房を建設するため巨額を投資しました。この工房は地元の青年が伝統的版画制作の方法を学ぶ場所となっています。ベトナムの歴史学者レ・バン・ランさんは次のように語りました。
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「ドンホー版画の維持、保存センターはドンホー村の伝統的版画の維持、保存に大きく寄与しています。このようなセンターがあるのはいいですね」
ドンホー村にあるグェンヒューサム職人の一家も現在、版画の生産に従事しています。サムさんの義理の娘(息子の奥さん)であるグェン・テイ・オアンさんはドンホー版画の初めての女性職人となってきました。オアンさんの話です。
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「ドンホー版画が失くなる恐れがありますが、私はドンホー版画の維持、保存に力を入れるだけでなく、新しいテーマを取り入れています」
ドンホー版画の維持、保存には職人の努力だけでなく、地元の行政当局の取り組みも抜きに語ることはできません。バクニン省人民委員会のグェン・バン・フォン副委員長は次のように語りました。
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「文化遺産を維持するため、その遺産が生まれ、育てられる共同体に関心を寄せる必要があります。そのため、私達は版画づくりに関する訓練コースを開くと共に国内外にこの版画を紹介しています。また、歴代にわたり、版画づくりに従事している世帯が版画の販売に有利な条件を作り出しています。」
ドンホー版画がユネスコの緊急保護無形文化遺産リストに登録するため申請書類を作成することは重要な意義をもつとされることでしょう。
今日のハノイ便りはドンホー版画の維持、保存とその価値の発揮についてお伝えしました。では、今日のこの時間はこのへんで失礼します。