山崎 こんにちは、山崎千佳子です。アンさんと一緒にハノイ便りをお伝えします。アンさん、先月、ベトナムに新しい無形文化遺産が誕生したそうですね。
アン はい、ベトナム中部のゲアン省とハティン省の民謡『ビー』と『ザム』がユネスコ、国連教育科学文化機関に、文化遺産として選ばれました。
山崎 今日は、その中部の民謡『ビー』と『ザム』についてお伝えします。
アン 『ビー』と『ザム』は、ゲアン省とハティン省の259の村で大昔から歌われてきました。地元住民にとって、精神的に欠かせないもの、糧と言えるかもしれません。
山崎 ベトナムの他の地方の民謡と同じように、『ビー』と『ザム』は、一般の人々の労働や生産活動から生まれたものだそうです。
アン 『ビー』と『ザム』は、もともとは織物の時に歌われたり、田植えの時に歌われたものですので、とてもシンプルな歌でした。それが、時間の経過とともに、その内容とメロディーが完成されたものとなって、人々に幅広く受け入れられています。
山崎 ベトナム伝統音楽を研究しているチャン・クアン・ハイ ( Tran Quang Hai) さんは、『ビー』と『ザム』について、次のように話しています。
(テープ)
「ゲアン省とハティン省の民謡に詳しい人は、多くありません。ベトナム語で『ビー』は、掛け合いで歌うという意味です。この民謡は織物をする時や菅笠を作る時、稲刈りの時など日常生活と密接に結びついています。」
山崎 ハイさんは、ビーとザムの価値、すばらしさは広く紹介されるべきであるとも話しています。民謡の『ビー』はより自由な感じで、歌い手は歌詞を短くも長くもできるということです。曲、メロディーも、歌詞によって長さが変わるそうです。一方、『ザム』は決まったメロディーで、内容は物語のようになっています。
アン 『ビー』と『ザム』の歌い方は違いますが、いずれも、農閑期や舟を漕ぐ時や薪を取りに行く時など日常の労働の中でよく歌われています。
山崎 先ほどのベトナム伝統音楽を研究するチャン・クアン・ハイ( Tran Quang Hai) さんが、ビーとザムを詳しく説明しています。
(テープ)
「これらの民謡の歌詞は、ベトナム独自の詩や諺などを基にしています。一つの句が六字から成る六言(ろくごん)の句と八言(はちごん)の句 が韻を踏みながら、交互に交代していく形式です。1オクターブに5つの音が含まれる五音音階というベトナムの伝統音楽の特徴を示しています。」
山崎 今日のハノイ便りは、中部の民謡『ビー』と『ザム』について、お伝えしています。ここで、『ザム』を一曲、お送りしましょう。「~」です。
(曲)
「~」をお送りしました。
アン 2003年のユネスコ総会で無形文化遺産の保護に関する条約が採択されました。その無形文化遺産の申請書類審査委員会が「ベトナム中部の民謡『ビー』と『ザム』は、ユネスコの基準を満たした」と判断したんです。条約の政府合同委員会のメンバー国の一つ、ベルギーの代表のマーク・ジェイコブスMarc Jacobsさんはこのように話しています。
(テープ)
「ベトナムのこの文化遺産には、価値があります。これは非常に重要な申請書類だと思います。」
山崎 『ビー』と『ザム』は現在も、ベトナム中部で日常生活によく歌われているということで、この民謡の保存は他の文化遺産より簡単と言われています。ベトナム国立遺産評議会委員のグエン・チー・ベン ( Nguyen Chi Ben) さんは次のように話しています。
(テープ)
「これらの民謡を保存するために最も重要なのは、歌い手です。自らがパフォーマンスを行う歌い手は、その素晴らしさを一番理解しているからです。経験豊富な歌い手が、ビーとザムに関する知識を他の人々に伝えていけるようなよい環境を作ることが大事です。」
山崎 さらにベンさんは「ベトナムは日本を始め、無形文化遺産の保存に関する世界各国の経験を学ぶ必要がある。これは民謡の歌い手が、それを職業として生活していけるような状況を整備するということである」と話しています。
アン そういう環境作りが実現するなら、『ビー』と『ザム』を始め、ベトナムの他の無形文化遺産が次の世代に長く伝えられていくでしょうね。
山崎 そうですね。では、おしまいに『ビー』を一曲お聴き頂きましょう。「~」です。
(曲)
「~」をお送りしました。
今日のハノイ便りは、ユネスコの無形文化遺産として認定されたベトナム中部の民謡『ビー』と『ザム』 についてお伝えしました。
それでは、今日はこのへんで。 Chao cac ban。