国境警備隊の識字教室


山崎
  こんにちは、山崎千佳子です。

ソン こんにちは、ソンです。今日のハノイ便りは、国境警備隊の識字教室についてお伝えします。

山崎 国境警備隊が行っている教室なんですか?

ソン はい。中部高原地帯にあるダクラク省はカンボジアと接しています。ここの国境を警備する部隊が、地元の人たちに読み書きを教えているんです。

国境警備隊の識字教室 - ảnh 1

山崎 地元の人たちというのは?

ソン 少数民族の人たちです。この国境の村、イヤルベ村はダクラク省の省都バンメトートから80キロ離れたところにあります。22の少数民族のおよそ6000人が住んでいます。北部山岳地帯と南部のベンチェ省から移住した人たちなんです。

山崎 識字率が低くなっているんですか?

ソン そうなんです。ベトナムの教育・訓練省によりますと、読み書きができない15歳以上の数はおよそ百万人ですが、その半分は少数民族の人たちなんです。山岳地帯や都市部から離れた不便な場所に住んでいる人たちです。

山崎 識字も含めて教育関係は教育・訓練省の仕事のように思いますが、国境警備隊が教室を開いているんですね?

ソン はい。社会全体でこの分野に関わっていこうという考えなんです。

山崎 少数民族の人たちが読み書きできない特別な理由は何でしょう?

ソン まず、貧困が挙げられます。主にトウモロコシとキャッサバ、これはタピオカの原料となるものですが、その栽培のみで生計を立てているので、住民の半数近くが貧しい生活を送っています。

山崎 また山岳地帯だと不便でしょうね。

ソン そうなんです。交通のインフラが整備されていないため、経済的にも社会的にも発展するのが難しくなっています。

山崎 貧困と不便さですね。勉強したくても家の仕事を手伝わないといけなかったり、学校が近くになかったから“学ぶ”ということができなかったんですね。

ソン はい。そこで、イヤルベ村に駐屯している国境警備隊が識字教室を開くことになりました。毎日夜8時から教室が始まります。

山崎 生徒は何人ぐらいいるんですか?

ソン 22人が参加しています。最年少は15歳、最年長は40歳の生徒さんです。読み書きを覚えることで、農業の技術を身につけたり、法律を理解してそれを守るという目的があります。

山崎 なるほど。単なる知識ではなくて、実際の暮らしに役立てるための識字教室なんですね。最年長の参加者( Le Van Dung)の話です。

(テープ)

「文字が少し読めるようになりました。今は畑でトウモロコシを植える時に、説明書を見て肥料や農薬の使い方がわかります。本当にうれしいです。」

山崎 今年23歳になった女性( Le Thi Hai) は、この教室で初めてペンを使えるようになったそうです。

ソン この女性は「小さい時から畑仕事をしてきただけなので、ペンを握るのが難しい。文字を書くのは木を植えるより難しい」と話します。でも毎晩、家事を早く終わらせて、識字教室に通います。忙しくてもやめないと言います。

(テープ)

「経済的にとても厳しいですけど、時間をやりくりしてがんばっています。読み書きができるとやれることも増えて、それで少しは家計の足しになるんじゃないかと期待しています。」

ソン 今日のハノイ便りは、国境警備隊の識字教室についてお伝えしています。ここで、一曲お送りしましょう。「~」です。

(曲)

「~」をお送りしました。

山崎 楽しみながら学ぶことができるよう、識字教室では先生と生徒で歌なども歌ったりするそうです。教室で教えている国境警備隊の隊員の一人( Nguyen Van Tho) は「今では、生徒たちが読み書きと簡単な計算ができるようになった」と話します。

(テープ)

「この教室は1年から2年ぐらい続けられる予定です。最後には、小学校3年生程度の識字レベルまでいくと思います。教室で使うノートや教科書などは国境警備隊が提供しています。」

山崎 国境警備隊のチュオン・バン・ホアン( Truong Van Hoanh) 大尉は「住民の知的水準を向上させることは地元社会の発展につながり、それが国境警備にもプラスになるため、警備隊の優先課題の一つになっている」と話しています。

(テープ)

「地元政府と協力して、識字教室を開いたり、住民に牛の飼育など畜産や作物の栽培技術を指導しています。同時に、法律を理解するための教育活動も行っています。こういったことで、住民が安心して生産に取り組み、この地に居住することで、それが国境地帯の領土主権の確保につながるんです。」

山崎 支援活動で、住民からの警備隊への信頼も厚くなったということです。読み書きができるようになったことが、生産活動の励みになっているということです。

ソン 隊員たちも初めは、教えるということに慣れなかったようですが、生徒たちの進歩を目の当たりにして、段々自信がついてきたようです。

山崎 1つのことが相乗効果で広がりを見せているいい活動ですね。では、おしまいに一曲お送りしましょう。「~」です。

(曲)

「~」をお送りしました。

今日のハノイ便りは、国境警備隊の識字教室についてお伝えしました。そして、先日のおしゃべりタイムでもお伝えしましたが、私、来週から1か月ほどお休みを頂きます。また9月からVOVのお手伝いをさせて頂きますので、よろしくお願いします。それでは、今日はこのへんで。

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