家電製品のリサイクル


山崎  こんにちは、山崎千佳子です。 

ソン  こんにちは、ソンです。今日のハノイ便りは、ベトナムの家電製品のリサイクルについてお伝えします。

山崎 ごみ問題は世界的な課題ですけど、家庭用電気製品、家電製品の処分も大きな問題になっていますね。

ソン そうですね。国連の統計によりますと、世界で1年間におよそ6500万トンもの家電製品がゴミになっています。

山崎 うーん、想像できない量です。もったいないですね。

ソン はい。携帯電話やパソコン、テレビなどの普及率が高まっているにつれて、どんどん深刻な問題になっていきます。

山崎 そうですね。日本では、2001年に家電製品リサイクル法が施行されてから、リサイクルへの取り組みがシステム化されましたが、ベトナムはどうですか?

ソン 残念ながら、ベトナムでは、そういった法律が本格的に制定されていないんです。今年の5月、政府が家電製品のリサイクルに関する決定を出しましたが、それだけではまだ足りません。国会で関連法案が整備されるべきとの意見が相次いでいます。

山崎 ベトナムでは、家電製品のゴミはどうやって処分されているんですか?

ソン 電化製品が壊れると、そのままごみ置き場に捨てる人もいますが、廃品回収業者に売る人がほとんどです。

家電製品のリサイクル - ảnh 1
天秤棒を担いで回って、壊れた家電を買い取る女性たち

山崎 何回か見たことがあります。古い電化製品、あれは壊れたものなんでしょうね。それを自転車やバイクで回収していました。

ソン 天秤棒を担いで回って、壊れた家電を買い取る人たちもいます。

山崎 天秤棒はベトナムらしいですね。いくらぐらいで買い取ってもらえるんですか?

ソン 安いですよ。今年の初めに私の母が廃品回収に出したんですが、壊れた扇風機が1万ドン、日本円でおよそ50円、故障したテレビが5万ドン、日本円でおよそ250円でした。

山崎 買い取られた家電はどうなるんですか?

ソン さらに大きな回収業者に売られます。でも、回収業者と言っても、日本のように、リサイクル技術を持つ専門業者ではないんです。簡単な工場(こうば)で、ハンマーやドライバーで電化製品を解体します。そして、銅や銀などを含んだ売れる部品を取り出します。残りはそのままごみとして捨ててしまうんです。

山崎 うーん。家電の部品に含まれる有毒な物質、鉛や水銀などはそのまま捨てられるんですか ?

ソン その通りです。壊れた家電製品の解体をする村というのが幾つかあるんです。例えば、ハノイから東へおよそ70キロ離れたところにあるフンイエン省のジース村はその一つです。村にはこの仕事に関わる世帯が100以上あるんです。 この村が仕入れる家電ゴミは、一日で数十トンにのぼります。

家電製品のリサイクル - ảnh 2
ジース村のごみのかたまり

山崎 ハンマーやドライバーなどで解体作業をしているんですね。

ソン そうです。この村のある家庭では、電話、パソコン、洗濯機、冷蔵庫など一日に合計で重さが数百キロにもなる家電を解体しているということですが、解体基準、ルールや決まりは全くないんです。

山崎 危険な感じがしますね。

ソン そうなんですよね。電話の解体作業をしていた人の話です。

(テープ)

「これを分解して、カバーや半導体などを分けます。それから、プラスチックや鉄を別々にします。」

ソン 先ほど山崎さんが危険ではないかと言っていましたが、その通りなんです。この村のいたるところには、解体された家電ゴミのかたまりが山のようにあります。そのため、村の空気や土、水に含まれる有毒物質は、国が定める基準の数倍を超えています。がんなどにかかっている人は周辺の村よりかなり高いと言われています。

山崎 それはかなり深刻な状況ですね。命の危険に身をさらしているようなものなのに、この村の人たちはどうしてこの仕事を続けているんでしょう?

ソン ずばりお金です。一家庭当たり、月に2億ベトナムドン、日本円でおよそ100万円以上もの収入を得ているんです。

山崎 日本でも月収100万円の人はなかなかいないです。ベトナムだと破格の額じゃないですか?

ソン そうですね。

山崎 でも、環境にも悪い影響を与えているそういった仕事に、行政からの規制はないんですか?

ソン 今年の5月までは、家電の回収、解体、リサイクルなどについての法律は全くありませんでした。5月に出された政府の決定で、家電製品のリサイクルの法整備がスタートしました。

山崎 国の取り組みとは別に、何か始まっているんですよね?

ソン はい。今年の9月に、コンピューター関連企業の大手、HPヒューレット・パッカードとアップルインコーポレイテッドが、「ベトナムリサイクルプラットフォーム」という組織を作りました。家電の回収を無料で実施しているんです。

家電製品のリサイクル - ảnh 3
回収所へ壊れた家電を持ちに来た市民たち

山崎 それはいいですね。ベトナムの人たちに新しいリサイクル方法を提示するいい機会になりますね。

ソン はい。回収された家電は、環境に優しい技術を利用して、有毒な物質を安全に取り除いた上で、再利用できる資源をリサイクルします。

山崎 現在、ハノイにはこのプロジェクトの家電回収所がまだ5箇所しかないそうですが、多くのハノイ市民に好意的に受け止められているようです。そのうちの一人(レー・チャン・フォンさん)のコメントです。

(テープ)

「今まで、壊れた電化製品は、廃品回収の人に売っていましたが、回収後、どのように処理されているのか全くわかりませんでした。家電ゴミは環境に悪い影響を及ぼすというのは理解できるので、リサイクルに役立つこうした回収プログラムはとてもいいと思います。」

山崎 環境への悪影響をわかっている人も多そうですが、そうではない人も少なくないんじゃないですか?

ソン そうです。そして、わかっているにもかかわらず、回収所へ電化製品を持ち込む人もまだ少ないんです。回収所までは遠いし時間もない、と言うんですね。

山崎 そして、回収業者に売れば、安くてもお金になると思ってしまう人もいるでしょうね。消費者の意識を変えるのがとても大切ですね。

家電製品のリサイクル - ảnh 4
回収所の家電ごみ

ソン そうですね。だから、その意識改革のため、プロジェクトの一環として、ビラの配布や説明会なども行われています。家電回収所が置かれているハノイ市カウザイ区の担当者(グエン・タイン・ガーさん)の話です。

(テープ)

「私たちは毎日、市民に家電ゴミの影響を知ってもらうための活動を行っています。地区の集会所で説明会を行ったり、一軒一軒、家を回って説明しています。人々の認識を変えるためには、直接説明するのが一番だと思います。みんながみんな、ゴミの悪影響をわかっているわけではないんです。」

ソン 今月4日には、このプロジェクトのホーチミン市での家電回収所、4か所がオープンしました。これから、ベトナム全土に広がっていく予定です。

山崎 でも、このプロジェクトだけでは、電化製品のゴミのリサイクルは十分じゃないですよね?

ソン そうなんです。あくまで民間団体の一つの試みにすぎません。家電のリサイクルはベトナムの差し迫った問題です。

山崎 うーん、国と社会全体で取り組まないと、解決できないですね。ベトナムの環境保護の専門家(ファム・ゴック・ダンさん)の話です。

(テープ)

「再利用できる資源を回収して、有毒な物質を安全に処分することができる施設が必要です。試験的に回収して処分するのでは、全然足りないんです。生活ゴミと家電ゴミの徹底的な分別も絶対条件です。」

山崎 世界的に見ると、家電ゴミのリサイクルに関して、大分遅れをとっている印象のベトナムですが、これを機に環境に優しいリサイクルがどんどん進んでいくことを期待したいです。最後に、一曲お送りしましょう。

(曲)

「~」をお送りしました。

今日のハノイ便りは、ベトナムの家電製品のリサイクルについてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。


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