ザオ族の民族衣装

「拡張現実」とは現実の世界に仮想世界を重ね合わせて表示する技術を指す言葉で、スマートフォンなどで見ると、現実世界にナビゲーションや３Dデータ、動画などのデジタルコンテンツが出現し、現実世界に情報を付加してくれる技術です。簡単に言うと、拡張現実は現実世界の「足りない」または「補足したい」情報を補ってくれるものになります。

こうした技術を活用した「ベトナムの民族衣装」プロジェクトは、民族衣装を画集の形で紹介するだけでなく、それぞれの衣装について布や作り方、着方、そして、それに関連する風俗習慣や信仰などに関する情報も詳細に提供しています。このプロジェクトはもともと、南部カントー市にあるFPTカントー大学でグラフィック・デザインを専攻した3人の学生の卒業論文でしたが、大学の先生と同級生から好評を得て激励・支援を受けたので、現在のプロジェクトへと発展しました。この3人の学生の一人チャム・ミン・タオさんは次のように話しました。

（テープ）

「民族衣装について研究した人は少ないので、これに関連する情報は少なくて、ばらばらになっています。そのため、私たちはいろいろなソースから情報を探してから、108のデジタルイラストにまとめました。わずか3か月で、絵を描き、画集にし、情報を加えるなどやらなければならないことがたくさんあったので、とても大変でしたが、先生や同級生から大きな応援を頂いたので、やっとできました。」

ベトナムの民族衣装について触れるならば、エレガントなアオザイを着た女性の姿がパッと浮かぶ方も多いかもしれません。色鮮やかで、シルエットの美しいアオザイは世界で最も美しい民族衣装とも言われています。しかし、54の民族が共に住んでいるベトナムでは、多数民族であるキン族の伝統衣装「アオザイ」のほか、残りの53の少数民族はそれぞれ独特な伝統衣装を誇りにしています。

そのため、アオザイはもちろん、53の少数民族の伝統衣装も紹介する「ベトナムの民族衣装」プロジェクトがSNSやインターネット上で公表されると、社会の注目を集めています。これは国内外の人々にベトナムの各民族の豊かで独特な伝統衣装を理解してもらうとともに、各民族間の相互理解と団結の強化に役立つものであると評されています。プロジェクトの担当者グエン・ソン・トゥンさんは次のように話しました。

（テープ）

「このプロジェクトを通じて、私たちは微力ながらも、ベトナムに共に住んでいる54民族の間のつながりを強めたいと思います。また、民族衣装を始め、ベトナムの豊かな文化を世界の人々に紹介し、ベトナムのイメージアップを図りたいと思います。」

少数民族居住地の市場

「ベトナムの民族衣装」プロジェクトは最初、3人の学生が始めたんですが、大きな社会的意義を持つことで、多くの若者がボランティアとして参加し、今や、プロジェクトのメンバーは15人になりました。一つのデジタルイラストを完成させるために、輪郭で絵を描くことや、コンピューターで絵をデザインすること、情報をまとめること、音声やビデオを絵に加えることなど、いろいろな工程がありますが、それぞれのメンバーは自分の得意を生かして緊密に協力し、プロジェクトを徐々に完備しています。プロジェクトのメンバーの一人チャン・タイ・タインさんは次のように話しました。

（テープ）

「偶然SNSで「ベトナムの民族衣装」プロジェクトを見て、すごく印象深かったですよ。ベトナムの各民族の伝統衣装に関する写真や画像はインターネットで多いですが、先端技術の「拡張現実」を活用してパフォーマンスするのは初めてです。そのため、伝統衣装は見る人の目の前に生き生きと現われ、離れられなくなり最後まで見てしまうという感じです。そんなわけで、プロジェクトに参加することにしました。」

プロジェクトのメンバーらは週一回オンライン形式でミーティングを開き、掲載されたデジタルイラストの修正や、新しいデジタルイラストの作成などに話し合います。これはプロジェクトをできるだけ完備し、ベトナムの各民族の伝統衣装の美しさを最大限に物語るための努力です。文化研究者ニャム・フンさんは次のように話しました。

（テープ）

「このプロジェクトの意義は大きいです。若者たちが伝統的価値に興味を持ってその価値の保存に取り組んでいることは印象的です。これからも、プロジェクトの波及効果が大きくなって、民族衣装を含め伝統文化に対する人々の認識・プライドの向上に役立つと期待しています。」

「ベトナムの民族衣装」プロジェクトのメンバーらはプロジェクトを完備するとともに、世界の人々にも理解してもらうため、英語版のデジタルイラストを作る計画があります。