山崎 こんにちは、山崎千佳子です。
ソン こんにちは、ソンです。山崎さん、ハノイのハドン地区にあるバンフック村は知っていますか?
山崎 シルク村と言われているところですよね。私は行ったことはないんですが、友達がハノイの街中よりシルク製品が安いと言って出かけています。
ソン そうですね。バンフック 村は昔から、絹織りが伝統産業なんです。今日のハノイ便りは、その伝統を守るためにがんばっている絹織物職人のかたをご紹介します。
山崎 バンフック村はハノイ中心部から車で30分ぐらいですよね?
ソン はい。ハノイの南西、およそ10キロのところにあります。村人のおよそ9割が絹織りに携わっているんです。
山崎 9割。ほとんどの人がやっているんですね。それだけ伝統があるんでしょう。
ソン そうです。1000年以上の歴史があるといわれています。でも、この伝統的職業がなくなってしまいそうになった時期もありました。
山崎 後継者不足などですか?
ソン いえ、戦争ですね。
山崎 戦時中に絹が作れなくなってしまったんですか?
ソン 絹織りはできたんですが、需要がなくなってしまったんです。
山崎 そうか、買う人がいなくなってしまったんですね。
ソン そうです。でも、伝統を守ろうという職人たちの努力によって、現在までシルク作りが続けられてきました。今日ご紹介するのは、そのうちの一人、グエン・ティ・タムさんです。
山崎 バンフック村の出身なんですね。
ソン はい。今年60歳になったタムさんは、まだまだ創作意欲が旺盛で、いつもすばらしい絹織物を世に出したいと、絹織りに力を入れています。
山崎 やはりご実家がそうだったんでしょうか?
ソン そうです。絹織物を生産する家庭に生まれたタムさんは、小さい頃から、絹織りに愛着を持っていたそうです。その思いから、つらいことがあっても、独特の美しさを持つシルクを作るため、絹織りの技術を学んでいきました。
山崎 好きこそものの上手なれ、ですね。あと、使命感もあったのかもしれませんね。
ソン そうですね。バンフック村をよく訪れるという人( Thai Mai Huong)の話です。
(テープ)
「バンフックのシルクをよく買っています。タムさんの店にも何回も来ています。品質も形態もいいですね。店のそばに工房があるので、安心して製品が買えます。」
ソン タムさんは、優れた絹織物を作る制作者ですが、それだけではありません。ハノイや中部のフエ、南部のホーチミンなどのベトナム各地はもちろん、フランスやドイツ、シンガポールなど海外にバンフック村のシルクをピーアールする活動にも積極的に参加しています。
山崎 タムさんが自分でデザイン、制作したシルクが2000年に行われた「タンロン・ハノイ遷都1000年記念式典」に参加した各国のVIPへの贈呈品として使われたそうです。
ソン また、同じく2000年に、ベトナム最後の王朝、グエン朝の王族や貴族達の衣装の復元にも成功しました。2011年には、タムさんが作った「2匹の龍」という絹織物が、ハノイ市人民委員会からハノイの代表的な農業農村製品として選ばれているんです。
山崎 すごいですね。輝かしい経歴ですね。ここで、一曲お送りしましょう。「~」です。
(曲)
「~」をお送りしました。
山崎 戦時中の絹織り産業消滅の危機は乗り切ったものの、やはり昔からの技術が忘れられていく状況もあったそうです。タムさんは様々な試みをします。
ソン はい。バンフック村の伝統的職業を発展させるにはどうすればいいかということをいつも考えるタムさんは、毎日、若い職人を対象に昔ながらの絹織りの技術を教えています。
山崎 また、絹織物に関する知識を得られる講座も開いているそうです。製品のPR、そして販売増につながるようにということからだそうです。
ソン タムさんに教えを受けている若い世代の職人( Nguyen Mai Anh)の話です。
(テープ)
「タムさんは絹織物をとても大切に思っています。私たちにすごく熱心に教えてくれます。タムさんの思いが伝わるので、私たちも同じような気持ちになっています。この伝統的職業を守っていけるよう、がんばっていきたいです。」
ソン タムさんは、絹織物の保存の他、地元に雇用機会も作っています。バンフック村人民委員会副委員長( Do Thi Ha)の話です。
(テープ)
「タムさんが経営している絹織物の工房には15台の機織り機があって、多くの人たちに働く場を提供しています。他にも、タムさんは地元で行われている慈善活動などにも積極的に参加してくれています。」
ソン 幅広いカテゴリーで、バンフック村の伝統職業を守る活動をしているタムさんですね。制作者としても、どんどん新しいデザインに取り組んで、伝統の絹織物をさらに発展させたいそうです。
山崎 こういう話を聞くと、分野は違いますが、私もまだまだがんばらないと、と思ってしまいます。では、おしまいに一曲お送りしましょう。「~」です。
(曲)
「~」をお送りしました。
今日のハノイ便りは、バンフック村の伝統産業、絹織物を守る活動に取り組む絹織り職人、グエン・ティ・タムさんについてお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。