芸術テーマとしてのホーチミン元主席


山崎
  こんにちは、山崎千佳子です。ソンさんとハノイ便りをお送りします。ソンさん、よろしくお願いします。

ソン  お願いします。今日のハノイ便りは、ホーチミン元国家主席に関する話題です。今月5月19日は、ホーチミン元主席の誕生日だったんです。

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山崎 それで、今わかりました。よくベトナムには、日付と「~記念日」のように書かれた大きな看板が街中にありますよね。「4月30日、南部解放記念日」とか「9月2日、独立記念日」などのようにです。全部ベトナム語で書いてあるのでよくわからなかったんですが、「5月19日」の看板は、ホーチミン元首席の誕生日のことだったんですね。

ソン そうなんです。今年は生誕125周年で、ベトナム全国各地で記念活動が盛んでした。「ホーチミン主席の道徳を見習おう」という運動が行われているんですが、そのキャンペーンをテーマにした芸術作品コンクールの授賞式も行われました。

山崎 ベトナム建国の父と言われているホーチミン元主席ですが、亡くなってからもう大分経つんですよね?

ソン はい、今年で46年になりますが、いまだにベトナム国民には、民族の英雄として尊敬されています。芸術家たちのインスピレーションの素にもなっています。

山崎 どういうイメージなんでしょう?

ソン 偉大な革命家というのはもちろんですが、家族の中でおじいさんかお父さんのような感じで親しみのある存在でもあります。

山崎 だから、「バック・ホー」、ホーおじさんと呼ばれているんですね。

ソン そうなんです。だから、ベトナムの歌や詩、絵画、写真、小説、エッセイなど、数え切れないほどの作品のテーマとなっているんです。2005年には、ハノイにあるホーチミン博物館と出版社が協力して、ホーチミン元主席をテーマとした歌、楽曲を集めたものを出版しました。掲載された115の楽曲の中には、イギリスやロシア、インド、キューバ、ベネズエラの作曲家の作品もあります。

山崎 ワールドワイドですね。1人の人物をテーマに115もの歌があるのも驚きですが、その中でも一番有名な歌というのはありますか?

ソン 私が思うに、「喜びの大勝利の日にホーおじさんがいるようだ」という歌があるんですが、それかなと思います。ベトナム人だったら、この歌を知らない人はいないでしょう。

山崎 そんなに有名なんですね。

ソン はい。1975年4月30日の午後、ベトナムの声放送局が「サイゴン解放」のニュースと共に、この曲を流したんです。当時のベトナム人の気持ちと希望を的確に表現していると絶賛されました。

山崎 その放送がきっかけで有名になったんですね。

ソン そうなんです。「喜びの大勝利の日にホーおじさんがいるようだ」を作曲したファム・トゥエンさんが、作曲の裏話を明かしています。1975年4月28日、サイゴンのタンソンニャット国際空港が爆撃されたことをラジオで聞いたトゥエンさんは、ベトナム民主共和国、いわゆる北ベトナムの勝利を確信して、夜9時半から11時半までのわずか2時間でこの曲を書き上げたということなんです。

山崎 すごいですね。放送で流されるわずか2日前にできあがったばかりの曲だったんですね。

ソン ベトナム戦争が終わって40年経ちますが、今でもこの歌は歌われているんですよ。4月30日の南部解放記念日によく歌われています。

山崎 では、ここでその歌をお送りしましょう。どんな曲なんでしょうか?

ソン 歌ったり、聞いたりするだけで、ベトナム人が敬愛するホーおじさんがまだ生きている。まだ私たちのそばにいる。一緒に勝利の喜びを分かち合うような感じがする歌です。親しみやすいメロディーと覚えやすい歌詞のこの歌は、幅広く歌われてきました。

山崎 ベトナム語を直訳すると、タイトルは「喜びの大勝利の日にホーおじさんがいるようだ」なんですが、より自然な日本語での曲紹介をさせて頂きます。お送りしましょう。「喜びの大勝利の日に」。

(曲)

「喜びの大勝利の日に」をお送りしました。

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「ホーチミン主席がトアンチャウ島を訪れる」絵画

山崎 番組の前半で、「ホーチミン主席の道徳を見習おう」という運動が行われているということと、そのキャンペーンをテーマとした優れた芸術作品への授賞式があったことをお伝えしました。

ソン はい。ホーチミン元主席生誕125周年を記念して行われました。文学や芸術作品、報道分野での作品への授賞式です。ベトナム共産党が開催しました。

山崎 その道徳キャンペーン自体は、いつから始まったんですか?

ソン 2007年に始まりました。この運動をテーマとする作品コンクールは2011年から行われています。第1回の優秀作品授賞式は、おととし2013年5月に行われました。今回が第2回の授賞式で、一等11点を含む計238の賞が与えられました。

山崎 多いですね。それだけ応募も多かったんですね。

ソン はい。受賞者には、若手の詩人や作曲家、海外に住むベトナム人も結構いました。国内外から応募がたくさんあって、社会的な効果が高いと評価されています。

山崎 文化スポーツ観光省のヴォン・ズイ・ビエン副大臣のコメントです。

(テープ)

「映画、演劇、美術、文学などの応募作品は、ホーチミン元主席自身のことはもちろん、元主席を模範としたケースも描かれていました。これらの作品は、若い世代をはじめとする国民の教育に役立つと思います。」

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「ホーチミン主席の道徳を見習おう」作品への授賞式(写真:thanhnien)

山崎 二等を受賞したベトナム軍写真クラブの主任、ドアン・ホアイ・チュン大佐によりますと、クラブのメンバーは軍隊での生活やトレーニング風景の写真をよく撮っているということです。中でも、ホーチミン元主席をイメージして懸命に訓練に励む兵士たちの姿がよく見られるそうです。チュン大佐の話です。

(テープ)

「ホーチミン主席は兵士たちの模範となっていて、私たちの多くの写真のテーマとなっているんです。賞を頂いたクラブの写真集は、懸命に訓練に取り組みながら、前向きに日々を生きる兵士たちの姿を心を込めて撮影したものです。この写真集を通して、メッセージを伝えたいと思います。兵士たちは前の世代からの伝統を受け継ぎつつ、最新の情報や知識を活かして、困難な状況下でもベトナムを守るための任務に全力を尽くしているのです。」

山崎 今回はコンクールについて幅広くピーアール活動が行われたということで、山岳地帯などに住む少数民族からも応募がありました。テイ族、ヌン族、タイ族、エデ族、チャウロ族などから受賞者が出ました。その中で、少数民族の詩や歌を集めた「ホーチミン主席への恩返し」と題した詩集は、一等を受賞しています。この詩集の編集代表者、チャン・フイ・ソンさんの話です。

(テープ)

「ホーチミン主席は少数民族の人々にも影響を与えています。人口が比較的多いテイ族、モン族、ザオ族などでも、わずかな人口のマン族、チョラオ族などでも、みなホーチミン主席に恩を感じているのです。少数民族居住地のどこの村でも、ホーチミン主席をテーマとした作品が見つかりました。これらはその共同体の中で生まれ、大切な貴重品のように保管されています。長年に渡って、ホーチミン主席を称える少数民族の40以上の詩歌を集めています。こういった詩や歌は、少数民族の村で再び脚光を浴びているんです。」

山崎 ホーチミン元主席が亡くなってから、今年で46年。まだまだ大きな存在ですね。

では、おしまいに一曲お送りしましょう。「~」です。

(曲)

「~」をお送りしました。

今日のハノイ便りは、芸術テーマとしてのホーチミン元国家主席の話題をお伝えしました。それでは、今日はこのへんで。


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