「遠い島に駐屯する僕
この島も馴染み深くなった
君よ、僕の心は陸の上の故郷にあるが
毎日、この青い海を守っている」
お聞き頂いた歌は「我々のチュオンサ諸島」でした。
ベトナム語でチュオンサ諸島、日本では南沙諸島で知られるこの群島に駐留しているベトナム海軍の少尉、グエンスイチンさんの故郷は、北部の港湾都市ハイフォン市のトゥイグエン県です。チンさんは毎週、奥さんのホァンティマイさんに手紙を送ります。
チンさんの手紙
マイさんはご主人を思うたびに、この曲「我々のチュオンサ諸島」を聞きます。チンさんとマイさんはベトナム新聞を通じて知り合い、4年間の交際の後、結婚しました。
マイさんは次のように話しています。
(テープ)
「主人はチュオンサ諸島についての歌が大好きなので、その特集CDをプレゼントしてくれました。私も毎日そのCDを聞いて、好きになりました。」
2ヶ月の新婚生活を送った後、チンさんはチュオンサ諸島に向かいました。2年後、故郷から送られた自分の子供の写真を受け取ったチンさんは、喜びに沸きました。
妻のマイさんは、ハイフォンでチンさんを待ちながら、子育てをしています。1人で育児をするマイさんには様々な問題があるはずですが、チンさんには子育ての大変さは語らないそうです。
チンさんの奥さんと子供
マイさんの話です。
(テープ)
「一人での子育ては大変です。特に子供が病気の時は一番困ります。私と子供のことを心配する主人は頻繁に電話をかけてきてくれます。でも、彼が仕事に集中できるよう、“皆元気なので、安心して、お仕事を頑張ってください”といつも言っています。」
マイさんは毎日、夫が駐留している島に関するニュースや記事を読んだり、映画を見たりします。2007年7月に、マイさんはチンさんに会うため、初めてチュオンサ諸島を訪れました。マイさんは次のように話しました。
(テープ)
「島に夫に会いに行けると聞いてから、15日の間、ドキドキしていました。」
2012年にも、マイさんは再び、夫を訪ねました。その時には、生活しやすくなったチュオンサ諸島の大きな変化を目にして、非常に喜んだマイさんは、チンさんの生活や仕事の様子に安心しました。一方、チンさんは、家事・育児を一人でこなす心優しい妻の大変さを感じています。チンさんは次のように話しています。
(テープ)
「海軍の士官である私は、家を離れて、離島で任務を負わなければなりません。長年にわたって、妻は一人で子育てをしていて、大変な生活を送っていると思います。でも私たちは、手紙で、苦しみや悲しみ、そして幸せも分かち合えます。妻のおかげで、陸から遠く離れた沖合いに住んでいても、明るい未来への信念をもって、全力をあげて任務に取り組みたいと思います。」
ベトナム海軍小尉のグエンズイチンさんにとって、家族は母国の海域や島の主権を守るための原動力となっています。家族や国への思い、そしてその両方を守るため、チンさんは今日も静かに銃を握ります。