先日、ベトナムの著名な作曲家、ホアンヒエップ(HoangHiep)が82歳で亡くなりました。「ハノイを思う」「ヒエンルオン橋の傍に寄り添う」「紅葉」など、ホアンヒエップの作品は、ベトナムでよく歌われています。その歌は、ホアンヒエップの人柄と同じく、優しく、穏やかな印象を与えます。
60年にわたる創作活動で、ホアンヒエップはおよそ4百曲を作曲しました。ベトナムの歴史をテーマにしたものや、各地の民謡を基にした甘いメロディーのものもあります。
中でも有名なのが「ヒエンルオン橋の傍に寄り添う」です。ベトナムの平和と統一というベトナムの人々の思いをうたったものです。
ホアンヒエップは、1931年10月に南部のアンザン省に生まれました。17歳で、作曲活動をはじめましたが、1957年、26才で「ヒエンルオン橋の傍に寄り添う」を作り、よく知られるようになりました。ホアンヒエップは、400曲あまりを作っていますが、そのおよそ半数は、ベトナム戦争時の苦しい時代をテーマにしたものです。
戦時中に作られた多くの歌が、今なお、よく歌われています。ベトナム作曲家協会のファムゴクコイ副会長は次のように話しました。
(テープ)
「ホアンヒエップの作品は、通常の音楽を超えて、生活の色どりといったものや民族文化の美しさがメロディーにあふれています。これは、二つの戦争の苦しい歳月の中から生まれたものです。彼は、音楽と言葉の天才です。」
ホアンヒエップの作品は、戦争をテーマにしたものだけではありません。男女の愛もうたっています。「ツバメが飛んでくる季節」「君は僕を待つ」「僕が君と出会う場所」などの歌は、性別や年齢を問わず多くの人に人気があり、中でも「ハノイを思う」という歌はよく歌われています。
ベトナムの有名な男性歌手タンミンは、次のように話しています。
(テープ)
「“ハノイを思う”は、ベトナムの首都を描いた素晴らしい作品です。この歌は、ハノイの人々の心の中に永遠にいき続けるかもしれません。そのほか“幼い頃の川に戻る”も好きな歌です。ホアンヒエップの作品は、ベトナム音楽の宝といえるでしょう。」
ホアンヒエップは、言葉の魂を音楽に吹き込む作曲家とも評されています。
作家のグエンクアンサンは次のように話しています。
(テープ)
「ホアンヒエップは、作曲家であり詩人でもあります。彼は言葉の魂を音楽に吹き込みました。ベトナムの詩を、音楽に最大限に活用できる作曲家はホアンヒエップしかいないのです。」
2000年、ホアンヒエップは、ベトナム政府から国への芸術分野の功労者に贈られるホーチミン賞を受賞しました。これからも、ホアンヒエップの作品は、ベトナム人一人一人の心の中に永遠に生き続けることでしょう。