第1編: “U字線”の領有権・曖昧さの要求

南シナ海:「U字線」の非合理

(VOV) ベトナム東部海域、いわゆる、「南シナ海」の平和、安定の維持は客観的、かつ、必然の要求で、共通の願望と利益に応えています。

東部海域にあるホアンサー( Hoang Sa: 西沙) 群島、(英名:パラセル)とチュオンサー( Truong Sa:南沙)群島、(英名:スプラトリー)の領有権・国際法から見る

VOV:中国が一方的に主張している 9段線” 、いわゆる、牛の舌」の線、又は、「 U字線」は東部海域の総面積のおよそ80%を網羅し、東部海域に面している多くの国々の海岸線に沿っている。注目すべきことは、この「U字線」を発表して以来、中国はこの「U字線」に関する正式な説明をすることはありませんでした。しかし、中国は様々な手段による宣伝啓蒙を通じて、中国国民と世界の幾人かの人々、及び、組織は東部海域のほとんどの海域と4つの諸島は中国の領有権だということを誤解しています。

では「U字線」はどのように形成されたのか?そして、その本質はどのようなっものか?(VOV)ベトナムの声放送局 の『南シナ海:「U字線」の非合理』というタイトルの一連の記事はこの問題を解明します。

1記事:U字線の領有権・ 曖昧さの要求

「U字線」はいつ、どのように形成されたか?そして、その本質は?これに関して、多くの学者が様々な意見を出しています。しかし、この問題を客観的、かつ、多方面にアプローチするため、まず始めに中国人の研究成果を見なければなりません。

中国海洋情報センターの学者李令花氏は「1946年、林遵氏は艦隊を導き、各島の征服にあたった。征服とは言え、私の考えでは、正確に言うとこれは敗者の資産を受けたということ。いくつかの島はどの国のものか分からなかった。これらの島は日本が占拠したが、敗戦のため私たちに献上した。もちろん、私たちは喜んで受け取った (…).その艦隊に同行した者の中には地質と鉱物省の人物が居る。その者は筆を使って、架空の破線を勝手に大きい袋を描いた。本土に戻り、この破線が中国の地図に印刷され、公表された。その国境線がこのように生まれた」と書いています。

これにより、「U字線」が記入された最初の地図は第2次世界大戦後のものとなります。この地図は中華共和国の内務省所属国境・領土局が1948年2月に出版されたもので、その地図の名前は「南海諸島位置図」です。その中に、「U字線」、いわゆる、「牛の舌」と名付けられた理由はこの線は東部海域に広がる「牛の舌」の形をしており、11段線で表現されます。

第1編: “U字線”の領有権・曖昧さの要求 - ảnh 1

                                                                  「南海諸島位置図」



1949年、毛沢東に負けた蒋介石が台湾に逃げ込み、中華人民共和国(中国)が誕生しました。1949年、中国は地図を印刷し、その中で、「U字線」は1948年2月に出版した地図と同じでした。しかし、1953年に出版された中国の地図には「U字線」が9段線となり、バクボ( Bac Bo) 湾、いわゆる、トンキン湾にある2段が消されました。

このように、「U字線」は個人の地図から生まれ、チュオンサー( Truong Sa)群島に赴いた林遵氏の艦隊に同行した白眉初さんが1946年に作ったものです。その後、中華共和国、そして、中華人民共和国が作成した地図に記入されました。

これは異常な行為です。ですから、「U字線」が誕生した時点では、国際法に沿って、領海の幅は最低3海里でした。

そのため、中国の学者は「この「U字線」を描いた時、その作成者は現代の国際海洋法を理解できるか否か」という疑問を出した。「U字線」の作成者である白眉初さんが1946年に「U字線」を作成した理由を説明するため、1990年、北京へ招かれたという情報もありました。しかし、その人はこの不思議な「U字線」の誕生に関する正当な理由を示すことができませんでした。

しかし、この架空の国境線を弁護するため、多くの中国の学者はいくつかの理論を出しました。

国立の中国海洋局所属海開発戦略研究所の高志国教授は「中国の資料を詳しく研究した結果、中国は南シナ海の全ての海域ではなく、この海域にある各島とこれらの島の周辺にある海域だけをリクエストしたことが分かった」と述べました。

一方、中国の研究者である潘石英氏によりますと、「U字線」はこの半世紀にわたり存在しており、反対した国家はありませんでした。そのため、これは中国の境界線としての歴史的名義になりました。中国は南沙諸島(スプラトリ)、中沙諸島(マクルスフィールド)、西沙諸島(パラセル)、東沙諸島(プラタス)だけでなく、「U字線」内にある全ての海域の領有権を主張していました。

一方、中国の他の研究者である周克元さんは「中国の要求は歴史的な水域の領有権を主張するものではなく、主権的権利、及び、歴史的裁判権利の一種として、絶対的な領有権を主張するものではないと看做される必要がある」と強調しました。

しかし、中国のこの要求を正式に反発する声を挙げる中国の学者も少なくありません。北京天則経済研究所と中国で最大規模のポータルサイト「シナ(sina)・ネット」は「南シナ海・国家主権と国際規則」をテーマとしたシンポジウムを共催しました。シンポジウムで、中国海洋情報センターの李令花氏は「昔から、世界では、陸上でも海上でも架空の国境線は存在しなかった。南シナ海における9段線は架空のものだ。私たちの先人は具体的な経度や緯度がなくて、法的基礎もない9段線を作り上げた」と明らかにしました。

一方、北京天則経済研究所の学術評議会の会長兼中国社会科学研究所の張曙光教授は「9段線は法的根拠が全くない。国内の法律家と台湾の同僚も同じ認識を有する。これは中国が一方的に発表したものである」と強調しました。

上記は中国の学者の様々な意見ですが、中国の正式な観点はどうでしょうか?

中国が2009年5月7日、国連事務総長に宛てた口上書(外交文書)はこの60年間、この件に関する中国の正式な見解を示しました。これは中国が「U字線」が描かれた地図を世界に正式に発表する初めてのものです。

この口上書は「中国は南シナ海における島々と隣接水域に対する明確な領有権を有し、関連水域と海底、及び、海底の地層に対する主権的権利、及び、歴史的裁判権利を享受できる」と書きました。

「隣接水域」及び「関連水域」に関する中国のこの言及を通じて、南シナ海における水域に対する中国の要求は非常に曖昧であることが分かります。

ブリュッセル大学の国際法律センターのマルコ・ベネター博士は「中国は明確な指標を出すことができない。「U字線」に関する中国の学者の様々な説明と2009年5月7日、国連事務総長にあてた口上書に言及された内容はその結論を裏付ける。隣接水域」及び「関連水域」などこの口上書に使用された言葉は分かり難く、そして、文章は複雑である。これらの用語は1982年の国連海洋条約にないものである」との見解を出しました。

国連事務総長にあてた口上書に記述された言葉は難解で、説明もなく、世界地図の基準に準じていないため「U字線」は不明のもので、領有権を要求できません。

ブリュッセル大学の国際法とヨーロッパ法律学部のエリック・フランクス教授は「9段線を書いた地図にある南シナ海は地域内の沿岸国の地図と他の資料に書かれたものと比べると異なっている。それに加えて、各地図に描かれた「U字線」は同じものではない。1953年以前に作られた地図に11段の「U字線」であったが、その後、9段の「U字線」になった。その2段が消された正式な理由はなかった。地図に描かれた「U字線」は統一性がないので、これらの地図は信頼できるものと言えない」と述べました。

中国の9段の「U字線」は不安定で、かつ、不正確なものです。黄越教授によりますと、このような線は「国家の国境線」とすることができません。国際的な国境線の最も重要な特徴は安定と正確さなのです。

黄越教授は「これを国境線と言えるのか?答えは「ノー」であろう。ですから、国境線は安定したものでなければならないが、中国のこの線が国境線と言われているが、正確な座標を有していない。最初、11段の「U字線」であったが、後に、9段の「U字線」になった。国境線でありながら、このように勝手に訂正されることは国際的な国境線とはいえないだろう」との見解を示しました。

中国の「U字線」は技術面においても正確なものではありません。判例は地図を作成する際に、技術面での正確さを要求しています。パルマス島事件にはマックス・フーバー仲裁裁判官は「法的根拠になるため、各地図が満たされた最初の条件は地理的正確さである」と強調しました。中国の「U字線」はこの基準を満たしていません。

アメリカのジョンズ・ホプキンス大学のマーヴィン・オット教授は上記の理由で、中国の宣言は国際法に沿った基礎がないとし「中国は領有権を主張するが、国際法に基づいたものではない。中国はその主張を証明する具体的な数字、合法的な証拠を示すことができない。中国の宣言には基礎がなく、中国自身がこのことをよく理解している」と述べました。

しかし、近年、中国は「U字線」を合法化させるために、立法面においても、現場に実施した行為を通じても、あらゆる手を尽くしています。

例えば、中国はこの海域で漁をしている漁民と漁船を拿捕するため、漁業検査部隊を軍事勢力と同じく装備しています。中国の国有石油大手の中国海洋石油(CNOOC)が海外の石油・天然ガス企業に対し、南シナ海の9鉱区の探査入札を呼び掛けました。注目すべきことは当該9鉱区は完全にベトナムの排他的経済水域(EEZ)および大陸棚の内側にあるということです。中国は三沙市というものを設立し、その中に、ベトナムのホアンサー群島、チュオンサー群島、及び、中沙(マクルスフィールド)を始め、9段の「U字線」の範囲内にある海域を網羅し、ベトナム東部海域の80%を占めています。

フランス軍の将軍で、中国、タイ、ベトナム駐在武官のダニエル・シェーファー氏は中国のこれらの行動について、「各事件が発生した位置を見てみましょう。2008年、アメリカのコノコフィリップス社はモクティン( Moc Tinh) 油田とハイタク( Hai Thach) 油田から撤退した。これらの油田は中国が作り上げた9段の「U字線」に位置する。PVNの探査船「ビンミン2号」は、北中部クアンチ省コンコー島から約43海里離れたベトナムの排他的経済水域(EEZ)内で、中国の漁船2隻による妨害を受け、調査ケーブルに損傷を負わせたという事件は9段の「U字線」に発生した。リードバンク(中国名=礼楽灘)海域で発生した中国とフィリピンとの衝突は9段の「U字線」と重なった。中国はこれらの事件で自分の要求を具体化させたいのだ」と明らかにしました。

中国のこうした要求と曖昧な立論は中国人の学者をも説得できません。中国人民大学の時段弘教授は「南シナ海の全域は中国のものでしょうか?最近、わが国の新聞もこの問題について曖昧の立場に立っています。南シナ海の全域が中国のものだということは世界全体が受け入れない」と強調しました。

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